ヒップホップの歌唱表現「ラップ」とは。韻やフロウも解説。

ヒップホップ・ミュージックのラップとは

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はじめに

ラップについて詳しく知りたい方へ。

この記事では、以下の内容を解説しています。

この記事の内容

  • ラップとは
  • ラップの3要素(韻・フロウ・リリック)について
  • ラップの醍醐味 = パンチラインについて
  • ラップバトルについて

ぜひ、最後までお読みください。

*それ以外について知りたい方は「ヒップホップの教科書」からお探しください。

written by @raq_reezy

ヒップホップの歌唱表現ラップとは

ヒップホップの4大要素:MC・ラッパー

ラップとは

ラップとは、リズム感(グルーヴ)を伴って、リリック(歌詞)を歌う表現手法です。

グルーヴを生み出すために、韻(ライム)を踏むことが一般的です。

元々は、音程やメロディをつけずに歌うのが主流でしたが、ボーカルの音程を矯正するソフトウェアであるオートチューンの普及以降は、音程をつけたラップもメインストリームに多数登場しています。

ラップの起源はパーティーのMC

ラップの起源は、ブロックパーティーMC(マスター・オブ・セレモニーの略)です。

ブロックパーティーが普及するにつれて、やがてDJたちは横にMCを置いて、マイクでパーティーを盛り上げてもらうようになりました。たとえば、ブロックパーティーの始祖であるDJのクールハークは、コーク・ラ・ロックという友人にパーティーを盛り上げてもらっていました。

そして、MCたちは即興で喋ってパーティーを盛り上げるだけでなく、やがて自分独自のトークのルーティンを用意するようになり、その内容も韻を踏んだりと洗練されていきました

こうしてラップが誕生したのです。

ラップは、このようにヒップホップの初期から育まれた重要な要素であったため、ヒップホップの4大要素にも数えられています。

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初のラップレコードは「Rapper’s Delight」

ブロックパーティーの現場で洗練されていったラップが初めて音楽作品としてリリースされ、世間に衝撃を与えたのはシュガーヒル・ギャングの「Rapper’s Delight」だと言われています。

この曲がヒットしたことで、パーティーの現場にいたラッパーたちは次々とレコードをリリースするようになりました。

ヒップホップ・ミュージックの詳しい歴史は、以下の記事をご覧ください。

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ラップの要素(1):韻(ライム)

韻(ライム)とは

ラップのひとつめの要素は韻(ライム)です。

韻とは、歌詞の中で繰り返し母音を揃えることでリズム感を生み出す手法で、欧米の作詞・ポエトリーでは、ラップに限らず韻を踏むのが一般的です。

たとえば、先ほど紹介した「Rapper’s Delight」の出だしを見てみましょう。

Now, what you hear is not a test, I’m rapping to the beat
And me, the groove, and my friends are gonna try to move your feet
You see, I am Wonder Mike and I’d like to say hello
A to the black, to the white, the red and the brown, the purple and yellow

和訳:
さて、今みんなが聴いてるのはマイクテストじゃないよ、俺がビートの上でラップしてるのさ
そして、俺とグルーヴ、それから俺の友だちで、みんなの足を動かしてみせよう(=踊らせてみせよう)
分かるだろ、俺がワンダー・マイクさ、俺はみんなにハローっていいたいね
Aからはじまって、ブラックもホワイトもレッドもブラウンも、パープルもイエローもね

Rapper’s Delight

「beat」と「feet」は母音が揃っていますし、「hello」と「yellow」も母音が揃っています。

このように母音を揃えていくことで、繰り返し感・ループ感が生み出され、それがグルーヴやリズム感に繋がっているのです。

韻(ライム)はラッパーのスキルのひとつ

韻を踏みつつ内容を繋げたり、予想外の単語で韻を踏んだりといった技術は、ラッパーの重要なスキルのひとつです。

たとえば、韻を踏む数を大幅に増やすことで独自のグルーヴを生み出したラッパーとしては、ご存知のエミネムがいます。

エミネムの代表曲「Lose Yourself」の出だしの部分を見てみましょう。

His palms are sweaty, knees weak, arms are heavy
There’s vomit on his sweater already, mom’s spaghetti
He’s nervous, but on the surface he looks calm and ready
To drop bombs, but he keeps on forgetting

意訳:
手のひらは汗ばんでいた、膝は震えて、腕は重かった
スウェットには早くもママのスパゲッティを嘔吐したあとがついていた
彼は心配だったが、表面上は落ち着いて爆弾を投下する準備が万端かのように振る舞った
だけど、彼は何度も(書いた歌詞を)忘れていた

“Lose Yourself”

めちゃめちゃ韻を踏みまくっていることが分かります。

韻については、以下の本が詳しいです。

声に出して踏みたい韻

「日本人の韻リテラシーを高めたい」

その思いを胸に、韻を踏むことについてとことん解説し続けてきたブログfumu.inがついに書籍化。物理の参考書が大ヒットを記録した頭脳派ラッパーの著者が、ラップの曲はもちろん、誰もが知るJ-POPや洋楽の名曲を例に出しながら、日常に潜む韻の仕組みやその美しさを徹底解説する。

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ラップの要素(2):フロウ

フロウとは

フロウとは、どのような抑揚やリズム感でラップをするかを指します。歌手でいう「歌い方」や「表現」のようなイメージです。

フロウのテクニックがないと、たとえ優れた内容の歌詞を書いても、おもしろい韻を踏んでも、聴いていられたものではありません。

カラオケで素人がラップを歌うと、(プロがつくった曲を歌っているはずなのに)いたたまれない雰囲気になることがあると思いますが、その原因はフロウに問題があるからです。

いかに耳に心地のよいラップをするかという「フロウ」もまた、ラッパーにとって非常に重要なスキルです。

フロウの基本テクニック

ここではどのようにフロウすべきかについて、あまり深くは触れませんが、フロウの基本テクニックは、韻を踏んでいる部分はすべて同じ抑揚に揃えて歌うというものです。

韻の部分でも書いたように、繰り返し感・ループ感を生み出して、グルーヴやリズム感を感じさせるために韻を踏んでいるわけですから、韻になっている部分は同じような抑揚で歌わなければいけないはずです。そうしなければループ感が生まれないからです。

実際、ほとんどのラッパーは、韻を踏んでいる部分は同じ抑揚でフロウしています。

ラップの要素(3):リリック(歌詞)

リリックとは

リリックとは歌詞のことを指します。ヒップホップ・ミュージックでは、なぜかリリックと呼ぶことが多いです。

ヒップホップは、リリックの内容を非常に重視する音楽でもあります。なぜなら、ヒップホップはマイノリティの声を発信する手段としても機能してきた歴史があるからです。

リリックの可能性を広げた「The Message」

もともと、ラップはパーティーを盛り上げるMCを起源としているので、初期のラップはパーティーソングが大部分でした。

しかし、ストリートの貧困と荒廃を歌ったグランドマスター・フラッシュ&ザ・フューリアス・ファイブの「The Message」のヒットによって、ヒップホップはメッセージ性を持った音楽へと進化していきます。

ストリートの荒廃を歌うという側面は、ギャングの世界を歌う「ギャングスタラップ」に繋がり、社会の問題点を歌うという側面は「コンシャス・ヒップホップ」に繋がりました。

こうした歴史があるため、ヒップホップにおいては、優れた内容のリリックを書くこともラッパーのスキルのひとつとなっているのです。

ちなみに、優れたリリックを書くラッパーは、リリシストと評されます。

ラップの醍醐味は「パンチライン」

パンチラインとは

多くのヒップホップ・ヘッズたちは、ラップを聴くときに、何よりもまず「パンチライン」を味わっていると思います。

パンチラインとは、その名の通り、パンチの効いたラインといった感じで、一度聞いたら耳に残るようなラップのフレーズを指します。

パンチラインは、韻とフロウとリリックのおもしろさがバシっとハマったときに生み出されることが多いです。

パンチラインの例

ケンドリック・ラマーという2010年代のヒップホップを率いたラッパーの一人がいるのですが、「HUMBLE」という曲に「my left stroke just went viral」(意訳:俺のちょっとした左手のストロークがバズっちまったぜ)という、ライブでも観客が大合唱するフレーズがあります。

このパンチラインは、その後の「Right stroke put lil baby in a spiral」と韻を踏んでもいますし、強気なリリックも魅力的です。何よりも、ビートが一瞬止まる瞬間に、いきなり声を張り上げるようなフロウが耳に残ります。

こうしたパンチラインを楽しむのも、ラップを聴くときの醍醐味です。

ラップバトルとは

ラップバトルとは即興のフリースタイルで、相手を貶し合うというラップを使った遊び・競技です。

日本では、テレビ番組の「フリースタイルダンジョン」や「高校生ラップ選手権」によって知っている方も多いのではないでしょうか。

ラップバトルは、競技性があって観客も楽しめることから、昔からラッパーたちが名乗りを上げる場所として存在していました。エミネムのように、ラップバトル出身でメインストリームで活躍しているラッパーもいます。

エミネムがラップバトルで成り上がっていく様子を描いた映画『8 Mile』は、日本にも大きな影響を与え、日本でもラップバトルが企画されるようになりました。

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2021年4月6日

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