資本主義は永遠には続かない?『資本主義の終焉と歴史の危機』(水野和夫)を読みました。

公開日: お金と社会

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水野和夫さんの『資本主義の終焉と歴史の危機』という本を読みました。

なかなか刺激的な本だったので紹介してみます。

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先進国の利子率の低下は、資本が増幅しなくなる世界を意味している!

こちらの本の基本的な論理は先進国の金利の低下という議題から始まります。

金利というのは、お金がどのくらいのペースで増えていくかという数字です。たとえば100万円を1年間貸して101万円で返してもらうと、年間の金利は1%ということになります。

金融というものが発達して以後の資本主義や投資の考え方の基本は、この金利が良いところへお金を投資・運用して、お金を増やそうというものでした。

値上がりしそうだったり、配当が良さそうな企業の株を買ったり、利回りが良い債権を買ったりするわけですね。

ところがこの金利が世界中のあらゆる先進国で1980年頃を境に下がり続けているという点に水野さんは着目されています。

なぜ先進国の金利が下がるのか

金利と経済活動の利益

金利の背景にあるのは、企業等の営業活動の利益です。企業は金融市場で調達したお金で営業活動を行い、その一部を投資家や債権者に還元するからです。

たとえば、ある企業が銀行から1000万円を借りて人を雇い、工場で商品を生産して販売した結果、1000万円の元手を1500万円の利益に増やしたとします。この企業が1050万円を返済して、残りの450万円を自分の利益とした場合、1000万円を貸した銀行は1000万円が1050万円に増えたわけですから、5%の金利で資産を運用出来たことになります。

しかし、この場合に企業が1100万円の利益にしか増やせず、銀行に1010万円でしか返せなかった場合、銀行は金利1%でしか運用出来なかったことになります。このように企業が利益を出せなくなると、金利は下がっていってしまうのです。

利益が出せなくなる理由

水野さんは、ここから利益が出なくなっている構造に焦点を当て、その理由は新興国の経済的な発展だと結論付けます。

日本等先進国の経済活動は、新興国から安く原材料を輸入し、それを加工して、先進国の市場で高く売ることで利益を出していました。

しかし、先進国の人たちが満ち足りた生活を送るようになり、市場が飽和する一方で、アラブ諸国のナショナリズム等によって原油価格が高騰していくことで、売上にもコストカットにも限界が出てきて、通常の経済活動から利益を上げることが難しくなってきたというのです。

新たな投資先を求める先進国

こうして先進国が通常の経済活動から利益を出なくなり、金利が低下していく中で、アメリカのウォール街を中心に新たな投資先を求める動きが出てきます。

その筆頭が経済のグローバル化です。新興国の経済に投資して、その発展によってお金を稼ごうというのです。新興国は先進国に比べると人件費等の様々なコストが安いため、先進国に輸出をすると、先進国が商品を作るよりも利益が出やすくなるのです。

BRICS諸国と呼ばれる国々はこうした思惑での投資によって2000年代に急成長を遂げます。しかし、この裏には資本主義の限界が見え隠れしているというのです。

資本主義には「中心」と「周辺」が必要

資本主義の基本的な考え方が、お金を増やすというものである限り、何かを安く仕入れて、高く売る必要があります。資本主義は「中心」が「周辺」を利用して富を集めるシステムだとも言い換えることができます。

先ほども述べたように、従来は途上国から安く原材料を仕入れて加工した商品を、先進国の市場で高く売っていたわけです。つまり先進国が「中心」であり、途上国が「周辺」であったわけです。こうして先進国の国民は豊かになることができたのです。

ところが新興国への投資や経済のグローバル化、市場の飽和によって、これらの状況が変わり始めます。

新たな「周辺」が先進国の中に生まれる

まず先ほども述べたように原油価格等が高騰し、原材料を安く仕入れることが難しくなっています。

そうして先進国の通常の経済活動が限界を迎えたとき、先進国の富裕層やウォール街はお金を増やすために、新興国へと投資をし、新興国を成長させましたが、その結果として世界的に「中心」と「周辺」の組み換え作業が発生し、新興国の一部の人達が「中心」へと上り詰めていく一方で、先進国の国内で新しい「周辺」が生まれています。

新興国の発展によって、先進国の経済活動はコストが上がって行きます。その結果、皺寄せは先進国の労働者等に寄せられ、実質賃金は低下の一方をたどっており、アメリカではサブプライム層の問題、日本では非正規雇用の拡大、EUではギリシャの破綻といった事態を招いていると結論づけています。

資本主義はどうなるのか

お金が勝手に増えることを目的とした金融・投資というものが誕生したために、世界は成長し続けることを余儀なくされています。

しかし、資源の高騰や市場の飽和、新興国の台頭といった中で、今までに述べてきたように先進国の成長は限界を迎えています。そして先進国の投資家達は、先進国のみんなが豊かになるという国家的な理想を切り捨てて、経済のグローバル化に乗り出し、新興国への投資によってお金を増やし続ける一方で、国内には新たな「周辺」を生み出し続けてきたのです。

しかし、新興国への投資によってお金を増やすという投資家達の思惑にも限界があります。新興国も成長するとやがて先進国と同じように経済的な停滞を迎えるからです。そして、ブラジルやロシア、中国といったBRICS諸国の次はアフリカの発展だという話になり、世界中に投資が尽くされ、やがて投資先がなくなり、先進国や新興国の中には次々と新たな「周辺」が生まれ、やがて投資先を失った世界中のお金はバブルの形成と崩壊を繰り返し、その皺寄せは金融機関への公的資金の注入という形で税金や一般市民の経済にダメージを与える続けることになるというのです。

資本主義は本当に終わるのか?

ということで、ここまで『資本主義の終焉と歴史の危機』の内容を簡単に紹介してきましたが、他にも色々なことが書かれているので、将来の世界経済に興味がある方は是非読んでみられると良いのではないかなと思います。

資本主義は本当に終わるのかという論点はなかなか興味深くて、たとえば、エネルギー技術が発展して原油に頼らずとも安くエネルギーを作れるようになれば、まだまだ経済活動は利益を生み出せるのではないかとか、こちらの本は過去や歴史から論理を組み立てているので、インターネット産業やテクノロジーの発展等の新しいものが生み出しうるビジネスや市場を捉えきれていないのではないか等、つっこんで考えてみないと一概に賛成とも言えない気がする内容もありますが、非常に刺激的な視点で今と将来の経済を切り取った一冊でおもしろかったです。

ちなみに、こうした資本主義や産業の利益構造等については、直接的に同じ話ではないですが、去年ツイッターで勃発したドワンゴ会長の川上氏とホリエモンの議論がまた刺激的で面白かったので、こちらも是非!

七夕の夜、かわんご氏と堀江氏が起業や解雇についてアツい議論

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