「音楽だけで食う」の違和感。「ラッパーとして回収される」が100倍しっくりきたよ。

公開日: 曲にする程じゃないこと

microphone

「音楽だけで食っていきたいですか?」

こんな風にインタビューで訊かれたことってあると思うんですよね。(あるいはラッパーだと「ラップだけで食っていきたいですか?」かもしれません。)

僕自身、「はい、音楽だけで食べていきたいですね」とか答えたことがあります。

当時は、その質問がアーティストかどうかの踏み絵みたいに感じた覚えがあるんですね。

でも、よく考えると「音楽”だけ”で食う」ってすっごい後ろ向きな表現だなぁと。たぶん言わんとしてることは、そこまで厳密なことじゃないと思うんですけど。

ということで、少なくともラッパーに関しては、この表現は改めたほうがイイのかなと。

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音楽だけで食うという後ろ向きな表現

音楽だけで食うってどーいうことなのかなぁというのを考えてみたいと思います。

たとえばCDの売上とライブとPV撮影と著作権だけで生活してたら、音楽だけで食ってると思うんですね。

でも、たとえばラジオに出演してたり、コラム書いたりしてお金貰ってたら、もっと稼げます。活躍の幅も広がるわけです。じゃあ絵を描いて稼いでも良いか。もちろん、全然良いわけですよね。服屋もラッパーだとイケてるなって感じです。演技が上手ければ映画に出てもいいわけです。

そう考えていくと、結局はどうせ音楽だけで食わないんだから、”音楽だけで食う”なんていう表現は止めた方がいいと思うんですね。本当はあるはずの可能性を、この言葉を使ってるせいで潰してる人もいるかもしれないと。活躍してるアーティストほど「音楽だけで食う」なんてコダワリも言葉もないはずなのです。

実際に「音楽だけで食いたい」って言ってる人も、厳密には音楽以外のことをしたくないとは全然思ってないのかなぁと。「昼間普通に働いて副業で音楽するよりも、もっと音楽活動にたっぷり時間を割きたい」みたいな意味なのかもしれません。音楽を本業にしたいと。それならそれで、もっとピッタリの表現があるんじゃないかと思うんですね。

 

「ラッパーとして回収される」

ということで、僕が気に入っているのが「ラッパーとして回収される」って表現です。

というのは、環ROY氏がAmebreakのインタビューで以下のように話してたんですね。

NYこそがHIP HOPっていう原理的な発想や思想が、HIP HOPって概念を担保してるし、その考えも絶対に必要。この先は分からないけど今のところはそう。そのHIP HOPが極東という日本に来て、ガラパゴスで辺境な場所で育つんなら、それはメチャクチャ多様性のあるモノでいいんじゃないかっていうのが俺の立場ですね。日本はそれが生み出せる空間なんじゃないかなって考えてる。暫定的には、ラッパーっていう概念の枠を、極東のガラパゴスという空間/地域性において拡充していくっていうのが、今の自分の活動の芯になってるんだと思う。でも、30年後とかには『そういう枠を広げようとしてたラッパー』ってトコに余裕で回収されるのかなとも思う。だから儚いとも思うんだけど、当たり前とも言えて。俺はホントの意味で『ラッパーの枠組み』を拡張することが出来るのか、それとも、そういうスタイルの奴がいたよねって言われるのか、どっちかなと考えたりしてるところ

これはラッパーがどこまで原理主義的なHIPHOPをやらなきゃいけないかといったような、どっちかというと音楽論の話をされてるときの回答なんですけど、基本的な話の枠組みは同じだと思うんですね。

このインタビューを読むと、ラッパーがどこまでのことをして良いのか(HIPHOPのルールに従ってラップするしかないのか、活動の幅や枠組みをどんどん広げていけるのか)っていうことを、凄く深く考えてて凄いなぁと。

そして、その点に関してひとつの導きになるなぁというのがJay Zがインタビューで語っていた下記の内容なんですね。

■多くのアーティストは最後には全てを失ったり、レコード会社にとっては付け歯のようなもだったと気付くことになるよね。そうならないためには、音楽の才能があるということだけでなく、その才能をビジネスとして扱うことが大切だと気付いたのはいつ頃からなの?

Jay Z:それは音楽業界の大きなトリックだと思うんだ。「君はアーティストでいたいなら、お金を稼いじゃダメなんだ」って説得してくるんだよ。実際には物凄いお金を稼いでる人がそう言うんだ(笑)。全部でっちあげてると思うんだよ(笑)。特にロック&ロールの世界だと顕著だよね。物凄いお金を稼いでるのに、全然成功してないかのように振舞わなければいけないんだ。そうじゃないと彼らのキャリアにとって傷になってしまう。

その点ヒップホップは最初からずっと野心的な音楽だったんだ。いつだってアーティストがやるべきでないことみたいな壁をぶち破ってきたんだ。

結局のところ、アートとビジネスをきちんと分けていれば、たとえば音楽を作るときにビジネスのことを考えてなければ、それで良いと思うよ。何故なら、音楽はどこかでリアルでないといけないからね。聴く人の心に触れないといけない。聴かれたときにリアルなものとして響かないといけないんだ。だからスタジオではアーティストとして音楽を作って、その後で世界にマーケティングをするというのなら、何一つとして問題はないと思うよ。一切おかしなことはないんだ。

「18歳という統計的なファン層をターゲットにしない」。JAY Zが音楽業界で成功し続けてきた理由とは。

まぁ、Jay Zが「ラッパーはやっぱりラップだけをするべきだ」なんて言うわけがないのですが。

 

ということで、

せっかく色んなことが出来るのに、「ラッパーだからこれしかやらない」みたいなのってもったいないじゃないですか。

でも適当に何でもやりすぎて収拾がつかなくなるパターンもあるわけです。

ということで「いろいろやって、最終的にはラッパーとして回収される」って環ROY氏の表現はホントに絶妙だなぁと思うわけですね。

「ラッパーとして回収されたい」

これでいきましょう!笑

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