【アルバム】Logic『Under Pressure』は90年代の荒削りさと現代的な要素が凝縮された新しい音楽

公開日: アルバムの紹介

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Logic 『Under Pressure』

編集部評価4.5

平均評価5

*この記事はHIPHOP DXに掲載されている記事の和訳です。

90年代の荒削りさと現代的な要素が凝縮された新しい音楽

Logicのデビュー作は、洗練された技術でまとめ上げたリリックが奏でる聴き心地の良いシンフォニーというよりも、90年代の荒削りさと現代的な要素が凝縮された新しい音楽だ。

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メリーランド出身の彼は、学生時代からポップカルチャーの現場に積極的に出入りし、その細かい特徴を実によく理解していた。そして、過去の青写真を個人的なストーリーに結びつけてきた。

Logicはその名の通り、過去の出来事から自分が置かれている状況や背景を考え、自分のキャリアを実に合理的に選択している。

彼は自分のイメージをFrank Sinatraのように演出し、ファンを増やしてきた。さらに、Jay-Zのアルバム『Reasobnable Doubt』から上品な格好良さを学び、それとともにNasやBig Lのようにストリートの出来事を詳細に物語る力を身につけた。彼はA Tribe Called Questのアルバム『Midnight Marauders』でガイド的な役割をしていたThaliaに、その第2弾的な自分のファーストアルバムでも同じことをして欲しいと依頼した。

NO I.D.のもとで開花した才能

デビューアルバムのタイトルは『Under Pressure』という。今までに築き上げられたラップ史上のマイルストーンという尺度を利用して大物ラッパーになるという言い回しには、現代流のラップの言葉遊びが多少含まれている。しかしLogicは、それをさらに新しいレベルにまで引き上げた。No I.D.の指導の下で、これまでに学んで身につけたことを、全てひとつの枠組みの中で再構成してみせたのだ。しかもそれでいて、自分のストーリーについては全く妥協していないというのは驚きだ。この『Under Pressure』は、自己の内面を深く見つめ、外部からプレッシャーをかけられながらも自身でそのプレッシャーを軽減するという天才的な多面性を感じる、素晴らしいデビューアルバムといえるだろう。

アルバムには、サンプリングが多く使われている。OutKastの「So Fresh and So Clean」やKRS-ONEの「Mad Crew」のような曲を厳選し、さまざまな曲調にアレンジしている。彼の曲にどこか懐かしさを感じるのは、こうしたサンプリングのせいだ。

また、どん底の生活から這い上がってきたという彼のストーリーは、確かによく聞くような内容だが、何層にも重ねてラップをする彼のような才能を持つ人物は他にはいない。

たとえば「I’m Gone」という曲では、Marvin Gayeの「I Want You」がサンプリングされている。その曲ではさまざまな要素が融合しているので、曲を聴くとそうしたものがあふれ出てくるかのような感覚を抱くだろう。曲の途中で何度もフローを変え、音節を短く切ったり音の終わりを伸ばしてポイントを作ったりするのも特徴的だ。

俺の評価は、最初の一週間の売り上げで決まったりはしない。俺が失敗するのは、軟弱な歌詞を書いちまった時だけだ

Logicの音楽を聴くと、90年代のラップ復興の色彩が強く表れているのがよく分かる。そして彼のデビューは、現在のトレンド離れを起こさせ伝統的に理想とされてきたラッパー像の支持へと傾けていくことだろう。

その要因は、彼のストーリーの伝え方にある。つまり、物悲しくてときにソウルフルなビートに載せた暴力的な内容のリリックだ。彼は、自分には他のラッパーたちの手本になる才能があることを理解している。

また、先人たちのつくり上げたラップという形式にみんなが誇りを持ってもらえるようにするのが自分だということも心得ている。さらに、最終的に自分の成功を次のように評価するようだ。アルバムのイントロで彼は「俺の評価は、最初の一週間の売り上げで決まったりはしない。俺が失敗するのは、軟弱な歌詞を書いちまった時だけだ」とラップしている。Logicにとって、有名で偉大なラッパーでいるということは、まずは洗練された複雑なラップをして卓越した才能を発揮することなのだ。

1つでも曲を聴けば、彼がとても優れたテクニックを持つリリシストであることが分かる。それほど音節が多いわけではないが、即興のリズムに合わせて言葉を伸縮自在に操れるのだ。また自分のフローの巧妙さをとてもよく理解している。これまで彼は、そのフローを使ってラッパーとしての能力を証明してきた。そして今では、その効果を最大限に生かすために激しく言葉を繰り出す方法を使っている。たとえばTae Beastがプロデュースした曲「Growing Pains Ⅱ」では、控えめなフローの合間に強烈な言葉の連射が挿入されている。

このアルバムはまるで、『Under Pressure』という映画のようでもある。

このアルバムの持つ奥行きの深さは、彼の激しい感情からくる素晴らしいリリックの副産物だ。また、彼の直線的なセンスには、ストーリーテラーとしての熟練した才能が見られる。彼が作詞作曲する作品は全て意図を持ってつくられ、その意図がアルバムのテーマが反映されている曲のポイントへ向かって直線的に展開していく。彼の曲のテーマは、身内との壊れやすい関係、自分が体験した問題の多い過去や輝かしい将来、個人的な経験とより大きな文化の融合などだ。暗い生活についての歌詞を書くとき、彼は悲惨な運命を頭の中で新たにでっち上げるのではなく、自分の生活についての本当のストーリーを深いところまで掘り下げ、それを多少誇張してみせる。「Nikki」という曲では、ある女性をニコチンに例えて、彼女に中毒になっている男性についての歌詞を書いている。この曲が実に痛々しく感じられるのは、それが彼の実生活そのものだからだろう。アルバムの中で彼は、何度も「彼女」のことをほのめかしている。そしてこのアルバムはまるで、『Under Pressure』という映画のようでもある。

アルバム『Under Pressure』に収録されているたくさんの名フレーズを聴いていると、Logicの人生についての長編映画を観ているような気持ちになってくる。それが最高潮に達すると、心の中にはっきりとしたイメージまで浮かんでくるのだ。

Dun Dealがプロデュースした「Buried Alive」は、ラップの世界における激しいライバル争いの意味を考えさせられる曲だ。この中でLogicは自分自身に向かって「本当に有名になりたいのか?本当にスーパースターになりたいのか?」と問いかけている。また、暴力的なイメージの曲「Gang Related」は、ストリート生活の実態を掘り下げた曲だ。この曲では、自分の兄弟があまり家にいない父親に三倍の値段でクラックを売っていたことについて語られている。さらにアルバムのタイトルトラック「Under Pressure」では、彼の姉妹や父親から言われた決まり文句に同じような対応をしてしまうようになる前の状況ついてラップしている。その曲の最後には実際のボイスメールが使われ、彼が成功しているかのような印象を持たせるようになっている。

こうしたことから、この希望に満ちた自覚ある若く素晴らしいアーティストLogicのデビューアルバム『Under Pressure』はあっという間に大ヒットするに違いない。

この記事はHIPHOP DXに掲載されている記事の和訳です。(訳者ウェブサイト

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