記事の目次
はじめに
ヒップホップ(音楽)の種類が知りたい方へ。
この記事では、以下の内容を説明しています。
この記事の内容
- ヒップホップを時代で分類すると?
- ヒップホップを地域で分類すると?
- ヒップホップをサウンドで分類すると?
- ヒップホップをラップの内容で分類すると?
ぜひ、最後までお読みください。
*それ以外について知りたい方は「ヒップホップの教科書」からお探しください。
written by @raq_reezy
ヒップホップの種類・ジャンル:時代による分類
オールドスクール
ヒップホップは、ブロックパーティーの現場で発展していましたが、1979年に世界初のヒップホップレコードとされるシュガーヒルギャングの「Rapper’s Delight」が発売されてヒットしたことで、商業音楽としてリリースされる時代を迎えました。この時期のヒップホップをオールドスクールと呼びます。
代表的なアーティストとしては、シュガーヒル・ギャングやカーティス・ブロウ、グランドマスターフラッシュ&ザ・フューリアス・ファイブなどがいます。
The Sugar Hill Gang – “Rapper’s Delight”
ミドルスクール / ニュースクール
オールドスクールの影響を受けて、1980年代〜1990年代に登場したアーティストたちをミドルスクールやニュースクールと呼びます。
この時期には、ラキムやケアレスワンなど、リリック・ライム・フローともに高いレベルに洗練されたラップを行うアーティストたちが登場したことで、ラップのレベルが飛躍的に高まりました。
また、ハードコア寄りのRUN D.M.C.や、政治的なメッセージを曲に込めたパブリック・エネミー、ポップ寄りの路線を追求したネイティブ・タンの面々など、ヒップホップ音楽で表現される幅も広がっていきました。
Eric B. & Rakim – “Paid In Full”
90年代ヒップホップ
ざっくりと「90年代のヒップホップ」といった区切りで括られることもあります。
その場合は、ニュースクールなどに加えて、その次に登場したギャングスタラップのアーティストたちも入ってくることになります。
例えば、2パック、スヌープ・ドッグ、ノトーリアス B.I.G.、パフ・ダディ、ジェイZ、ナズなどのラッパーがいます。
Notorious B.I.G. – “Big Poppa”
その他
年代別のヒップホップの歴史については、以下の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら:
ヒップホップの種類・ジャンル:地域による分類
イーストコースト
ニューヨークを中心とする東海岸のヒップホップをイーストコーストと呼びます。ジャズなどをサンプリングしたビートの上にラップを乗せるシックなスタイルの曲がイーストコーストの主流でした。
Jay-Z – “Can’t Knock the Hustle”
ウェストコースト
カリフォルニアのロサンゼルスを中心とする西海岸のヒップホップをウェストコーストと呼びます。常夏のウェストコーストでは、ドクター・ドレーの生み出したGファンクと呼ばれる華やかなサウンドが流行しました。
2Pac – “California Love” feat. Dr. Dre
サウス
テキサス州のヒューストンやジョージア州のアトランタを中心とするアメリカ南部のヒップホップをサウスと呼びます。
サウスは、イーストコーストやウェストコーストと比べると全米進出は遅れましたが、遅めのBPM(テンポ)や電子音的なチープなサウンドなどを発展させ、最終的には、ダーティサウスやトラップといったサウス発のサブジャンルが全米のメインストリームを制覇するまでになりました。
サウスが広まるきっかけを作ったアンドレ・3000やピンプ・Cに加えて、リル・ウェインやグッチ・メイン、T.I.、ヤング・ジージー、リック・ロス、ソルジャボーイ、フューチャー、ヤング・サグなど、サウス出身のラッパーは時代を超えて数多くいます。
Gucci Mane – Lemonade
ヒップホップの種類・ジャンル:サウンド(ビート)による分類
ブーム・バップ(Boom Bap)
ブームバップとは、キック(バスドラム)の音をあらわす「ブーム」と、スネアの音をあらわす「バップ」から来ています。
思わず首を縦に振りたくなるようなサウンドが特徴で、ヒップホップの黄金時代と呼ばれる1980年代〜1990年代(ミドルスクールやニュースクール)のビートは、その多くがブーム・バップです。
Nas – “Nas Is Like”
トラップ
トラップとは、2010年代にアメリカ全土を席巻したヒップホップのサブジャンルです。
もともと「トラップ」という単語自体は、アトランタで「ドラッグを売っている家」を表すスラングとして用いられていました。
T.I.のアルバム『Trap Muzik』(2003年)や、グッチ・メインのアルバム『Trap House』(2005年)によって、徐々にサブジャンルとして認識されるようになりました。
2010年には、プロデューサーのレックス・ルーガーがプロデュースしたワカ・フロッカ・フレイムのアルバム『Flockaveri』によって人気に火がつき、アトランタ出身のフューチャーやヤング・サグ、ミーゴス(クエイヴォ等)といったラッパーの活躍によって、全米のメインストリームにまで駆け上がりました。
Migos – “Bad and Boogie” feat. Lil Uzi Vert
ドリル
ドリルとは、2010年頃からシカゴで発生したサブジャンルです。
サウンド面ではトラップであり、リリック面ではシカゴの暴力的なギャングスタラップであり、チーフ・キーフの「Don’t Like」が大ヒットしたことによって、一気に注目が集まりました。他には、リル・ダークなどが有名です。
また、イギリスなど各地でもシカゴのドリルを独自に再解釈したサブジャンルが生まれ、UKドリルなど、地名を冠して呼ばれています。
Chief Keef – “Love Sosa”
Gファンク
Gファンクは、1990年代の西海岸で大流行したサウンドで、ドクター・ドレーらによって生み出されました。
サンプリングにとどまらず、シンセサイザーの電子音や楽器の生演奏などを盛り込み、フックはシンガーが歌ったりと、とにかく心地のよいサウンドが特徴です。
ドクター・ドレーのほかに、スヌープ・ドッグやウォーレン・Gなどのラッパーがいます。
Dr. Dre – “Nothing But A G Thang”
ダーティー・サウス
音数の少ないチープな電子音サウンドとスローなテンポを特徴としたサウスのサウンドで、2000年代に流行しました。
リル・ウェインやグッチ・メイン、ソルジャボーイ、ピンプ・C、ヤング・ジージーなどがいます。やがて、上述したトラップへと進化していきました。
Soulja Boy – “Pretty Boy Swag”
クランク
クランクもまた、サウス発のサウンドで、チープなトラックの上にシャウト気味のラップを何重にも重ねたようなスタイルを指します。リル・ジョンやソルジャボーイが有名で、特にソルジャボーイの「Crank That」は全米チャートで7週連続1位を記録しました。
Soulja Boy – “Crank That”
マイアミベース
マイアミベースは、80年代後半から90年代にかけてサウスで流行ったサウンドです。
性的模写の露骨なリリックと、ローランドのTR-808をベースに使用した重低音のバスドラムを、BPM130〜140といった速いテンポのトラックで煽っていくのが特徴で、ややキワモノにも思えるようなパーティーサウンドです。
プロデューサーのジャーメイン・デュプリが、マイアミ・ベースの曲を集めた企画盤『So So Def Bass All Star』をリリースしたことで90年代に最盛期を迎えました。
Ghost Town DJs – “My Boo”
グライム
グライムは、厳密にはヒップホップではありませんが、イギリスを中心に流行しているラップ音楽です。
2010年代後半に、トップスターのドレイクがイギリスのラップシーンに影響を受けて、親交を深め、グライムのラッパーたちを自身の作品にも招いたこと等から、全米から注目を集めました。
Skepta – “Shut Down”
ローファイ・ヒップホップ
ローファイ・ヒップホップは、ジャズなどをサンプリングしたチルなビートに環境音などのノイズを加えたインスト音楽で、一般的にラップは乗っていません。
24時間ローファイ・ヒップホップを流し続けるYouTube上のチャンネルなどを通じて、勉強や作業、睡眠時の音楽として、全世界に広がりました。
lofi hip hop radio – beats to relax/study to
ヒップホップの種類・ジャンル:ラップ(リリック)による分類
コンシャス・ヒップホップ
コンシャス・ヒップホップとは、政治的な主張や黒人の立場など、社会の状況に意識を向けたリリックを特徴とします。
たとえば、パブリック・エネミー、コモン、2パック、ルーペ・フィアスコ、ケンドリック・ラマー、Jコール、ロジックなどがコンシャスなラッパーとしてあげられます。
Kendrick Lamar – “Alright”
ギャングスタラップ
ギャングスタラップは、カリフォルニアのロサンゼルスで活動していたカラーギャングの文化がリリックに反映されたことで誕生したヒップホップのサブジャンルです。
N.W.A.の大活躍によって、カリフォルニア以外のラッパーもギャングスタラップをするようになったため、サブジャンルといっても、現在の大多数のラップはギャングスタラップの影響を受けており、大体のヒップホップはギャングスタラップだと言っても過言ではありません。
草創期に活躍したのはアイス・Tやアイス・キューブといったラッパーたちでした。
N.W.A. – “Straight Outta Compton”
エモ・ラップ
エモ・ラップとは、ロックのエモとヒップホップが融合したようなサブジャンルです。
オートチューンをかけたメロディアスなフロウや、自身の内面を吐露するようなリリックが特徴です。
XXXテンタシオンやリル・ピープ、ジュース・ワールド、キッド・ラロイなどが有名です。
XXX TENTACION – “SAD!”
ホラーコア
ホラーコアは、ギャングスタラップが特異な進化を遂げたもので、ダークな不気味さや超常現象的な要素、あるいは具体的で残忍な描写などを尖らせたものを指します。
世界的人気を誇るエミネムの初期の曲も、妻のキムを車のトランクに詰めて殺害するなど、ある種ホラーコアの要素を含んでいるといえます。
[…] ヒップホップスターというと、黒人文化やドラッグ、社会問題などいろいろなものが連想されますが、忘れてはいけないものがギャンブルです。ヒップホップスターにはギャンブル好きで知られている人が多く、中にはギャンブルとお金をテーマとした楽曲を多数発表している人もいます。 […]