リリースペースの異様な早さ、Twitterでの謎のつぶやき。
曲を聴けば王道のヒップホップからゴルジェなどジャンルにとらわれない。
それでも、一見「形が無い」ように見えるが、すべての曲にdizという「形」が見え隠れする。
dizのラップは伝説的ヒップホップグループのパブリックエナミーのメンバー、チャックDのラジオにも流されるなど、日本を飛び越えて海外にも浸透する。
また、MC松島のレーベル「トウキョウトガリネズミ」にも参加が発表された。
「diz」の「形」に迫る。
(text by OTFJ)
結果的にリリースが早い
──そもそもラップを始めたきっかけは。
今の形になったのは多分4年くらい前ですね。
ちょうどMacbookを買った時期にネットでJRAP.COMってサイトがあって、どうも自分で録れるらしいぞっていう感じで始めました。
同時にツイッターも始めて、友達のヱスケーとツイッターを通して仲良くなったんです。
ヱスケーは地元の友達とラップグループ遊びというか、そういうことをやっていたので、機材について聞いたりしていましたね。
──もともとヒップホップが好きだったんですか。
もう関わりないですけど、元々地元の悪っぽい先輩にSnoop Doggとか教えてもらって、自分でも少し調べて気になっていた感じです。
10代の時は日本のラッパーだと、ソウルスクリーム、S-WORD、SEEDAをよく聴いていましたね。
──ヒップホップ一筋だったんですか。
14~5歳くらいからインターネット自体は使っていたし、浸かっていたので、割と知ってる方ではあったと思います。
でも、「HIPHOP最高!」という感じではなくて、色々聴いてる中の1ジャンルって感じです。
それは今でも同じですね。
──dizさんにとってヒップホップのヒーローは誰ですか。
パッと思いつく人が居ない自分にとっての弱点だと思ってます。
こうなれたら楽しいだろうなという憧れの部分でいうと、日本だと「NIPPS」、海外なら「LIL B」、「マック・ミラー」です。
最近初めて歌詞に感銘受けたのは、JET CITY PEOPLEの「ばんり」さんです。
あとは俺も所属しているトウキョウトガリネズミのメンバーの人たちです。
身内だからとかではなくて、真面目に。
──曲のリリースの早さから「日本版LIL B」とdizさんのことを表す人もいますが、リリースは意識して早く出しているんですか。
特に意識していないです。
思ったことはすぐにやらないと忘れちゃうし、集中力もないので、やれるときにサクッとやろうというくらいで。
早いって一部で言われることもありますが、普段テレビも観ないし、あまり人と喋らないし、田舎だから遊びに行くところもないので。
だから結果的にリリースが早いんだと思います。
dizーかいぶつ
変わったやつだと思われたい
──歌詞も独特ですよね。
オリジナルの下ネタスラングというか、でも、実は自分なりに意味があるよという手法はよく使います。
ヒップホップによく出てくる”ビッチ”を”雌しべ”に置き換えてみたり。
他にも色々あるんですけど、秘密です(笑)。
とにかく変わった奴だと思われたいんですよね。
──Twitterでも変わったツイートが多いですよね。
単に「イカ臭い話」が好きなんですよね。
現実でも仲が良い人相手ならTwitterのまんまです。
バカな話かもしれないですけど、コンパクトに現状を伝える感じとかTwitterで文章力が上がった気がします。
多分気のせいですけど(笑)。
──将来の夢はなんですか。音楽で食べていきたいという思いもあるんですか。
身の丈にあった感じでそれなりに休めれて、最低限の生活が不安なく出来てれば良いです。
今の時代、”不安なく”というのも厳しいと思いますけど、普通に憧れています。
創作活動の面では、「自分で食っていくぞ」というのは今のところ無いです。
表現のツールとして面白いっていうのが今の感覚ですね。
──謙虚ですね。
欲が無いとか、周りにも言われますね(笑)。
あんまり“最新”とかにも興味無いし、豪華な暮らしとかにも全く憧れないし。
それよりも自分のスケールにあったことをコツコツやりたいですね。
ただそれは、”今のところ”というだけで、「何か出来れば」という思いはありますね。
音楽を活かせるのだって、いわゆる「音源を出して」「どうこうして」とか、そういう正統なルートだけじゃないと思うんですよね。
もっとこれからの時代で変化していくものだとも思っています。
だからこそ今、音楽の活かし方を探しています。
一応まだ若いんで(笑)。
TWITTER NO OJIKI ~ツイッターのオジキ~
https://www.youtube.com/watch?v=EQ-oyqLO58E
海外は特別視していない
──その中でMC松島の新レーベル「トウキョウトガリネズミ」に参加されました。孤高なイメージでしたので意外に思いました。
急にMC松島さんにメールもらって、その後に1回イベントで会って。
メールの時点では面識が無かったんですけど、元々興味があった人で、自分一人でやるにも色んな面で限界があると思っていたところだったんですよね。
ただ、結局は”面白そうだから”参加を決めました。
全部そうなんですよね、俺の判断基準って。
dizらトウキョウトガリメンバーも出演
DJ6月 – むり feat. MC松島
──今一番“面白そう”と思えることは何ですか。
何かを企画したり作ったりしたいです。
それが今の自分だったらラップなんですけど、ネットサービス経由で日本だけじゃなくて海外の同年代の人が自分のことを知ってくれたりするのが面白いですよね。
ちょうど最近、パブリックエナミーのチャックDさんがメインパーソナリティーのラジオで自分のラップが流れたんですよね。
どういう経緯で流れたのかはわからないですけど、インターネットで日本を飛び越えてヒップホップの伝説級の人の耳にまで届くというのは面白いですよね。
──日本の枠を飛び出したいという思いが強い?
自分の処理出来る範囲だったらガンガンやりたいです。
今って県外の人とのやりとりとか普通だと思うんですけど、それが海外のどこかになっただけで、言うほど特別視はしていないです。
積極的に海外のビートメイカーなどコンタクトしてくれている人がいるんですけど、「トウキョウトガリネズミ」にそういった人脈も活かしていきたいですね。
──個人の活動に限界が来てるからトウキョウトガリネズミに入ったということですが、レーベルには何を期待していますか。
単に自分一人じゃキツイなってことでも、提案して、相談して、意見をくれる人ってありがたいと思うんで、そこは大きいですね。
更に、思考回路を含めて好きな人ばかりなので、本当に良い環境になりそうだなと思います。
自分もその部品の1個になれたら嬉しいですね。
今までよりも段階を上げて
──音楽性で目指してる方向は?
大きいテーマは、生きることにムキにならないことですね。
「死ぬ」ということではないんですけど、”逃避”です。
社会性はどこでもつきまとってくることだと思うし、別に嫌いじゃないんですけど、俺自身がヒドい根暗でコミュニケーション能力も低いので。
“妄想”、“空想”、“肯定”この3つが核かなと思いますね。
──曲を作る際に気をつけていることは。
作り込み過ぎないことですね。
6割、頑張って8割。
スペースを残して、聴いてくれた人が何かを考えてくれたら理想ですね。
俺が提示した内容と聴いた人の感じたことで100になるイメージです。
──今後の活動予定は。
トウキョウトガリネズミでアルバムの話が出てるので、それは力を入れて作りたいですね。
今までみたいに出来たら即座にフリーで出して少しでも聴いてもらうというのを控えて、アルバム用の曲を作るための餌の曲を作って溜め込もうって感じですね。
──アルバムですか!!楽しみですね。いつ頃発売予定なんですか。
まだ未定ってことで(笑)。
少なくとも、今までより段階を上がったところで作らないといけないと思うので、今まで以上の速度でアルバム曲を作るための餌の曲を作っています。
あとレーベルでも「トガリンピック」っていうものを企てています。
こちらも楽しみにして欲しいですね。
──「トガリンピック」って何なんですか。
ある程度の条件を決めて、アーティストに音源を送ってもらって。
勝敗を審査員に決めてもらったり、投票してもらったり…。
まだ話し合ってる段階なので、どういうシステムになるのかは分かりませんが、MCバトルのネットバージョンみたいな感じですかね。
優勝者には無料でMVを作ってあげたりなど優勝商品もあるかもです。
オリンピックとトウキョウトガリネズミの名前をかけてトガリンピックなんですけど、MC松島さんに「だっせぇ」って言われました(笑)。
誰かの何かのキッカケになれば良いなって思います。
俺もインターネットで知ってもらっての今なので、田舎からでもアクセス出来る発信手段の1つになれたら嬉しいですね。
プロフィール
diz
1991年生まれ。
変わった奴だと思われたいので、平行世界の自分たちとSNSを3交替制で24時間更新している。
シティハンターの冴羽獠がカッコいいと19歳頃から信じているが、最近はマイメロのアニメしか癒しがない状態に追い込まれているので、冴羽獠になるにはあと10年はかかりそう…。
2015年にMC松島に最新の詐欺手口で騙されてトウキョウトガリネズミに加入。
悔しいから意地で在籍している。
http://tokyotogarinezumi.com/diz-a-k-a-dizzy/
Twitter:@dizzlean
OTFJ
トウキョウトガリネズミ所属
2人組の映像制作ユニット
餓鬼レンジャー、RAq、空也MCなどの国内アーティストだけではなく、オーストラリアのヒップホップデュオLHAなど多数のMVを制作している。
〝心に残る映像を〟この思いを胸に映像制作を続けている。
またアーティストのトータルサポートを目指しインタビューやイベントレポートなども手掛ける。
企業のイベントレポートやVP制作依頼も随時受け付けている。
http://tokyotogarinezumi.com/otfj/
Twitter:@OTFJMOVIE
コメントを残す