MC松島。
正直に言えば「よくわからない」これが印象だった。
活動を見ていたら現状を変えたいという強い思いが伝わって来る。
そして、現状を変えるだけのパワーを内包しているというのも感じる。
その変化に僕らリスナーは期待もするが、なぜか不安定な気持ちにもさせられる。
「身体に噴火寸前のマグマを飼っている」
MC松島がそのマグマを外に出した瞬間、世界は変化する。
今回は、Twitter上で♯FC松というハッシュタグを付け、公開でインタビューを敢行した。
(text by OTFJ)
何と無くラップを口ずさんでいた
──まずは簡単な自己紹介をしてもらっていいですか。失礼ですけどラッパーなんですよね。
MC松島:
一応ラッパーですね(笑)。
漫画家としての方が知られているかもしれません。
去年のUMBでは全国ベスト8でした。
これを自分で言うのめっちゃダサくて嫌いですが、仕方ないですね。
社会に肩書きは必要ですよね。
──本業が漫画家なんですね。
MC松島:
漫画はTwitterと札幌のフリーペーパーにしか描いてないです。
全然プロとかじゃないです。
──そもそもラップを始めたきっかけはどうしてなんですか。
MC松島:
最初は小3くらいの時にEast EndのBeginning of the EndっていうCDをラジオで聴いた父親が買ってきて、それをいきなりコピーしていました。
初期衝動とか特にないのがコンプレックスです。
強いて言えば幼少期からMCハマーとか聴かされてはいましたかね。
──小学校からヒップホップを聴けるなんて、とても羨ましい環境です。影響を受けたアーティストは誰ですか。
MC松島:
物心つく前にEast Endを聴いていて、中学入ってから、ウワサの真相(RHYMESTER)、FIVE(RIP SLYME)、VITALIZER(KICK THE CAN CREW)が殆ど同時期に出る事があったり、気付いたら入り口はFG(FUNKY GRAMMAR UNIT)でしたね。
──初期衝動がないのがコンプレックスということですが、MC松島さんがラップをする動機ってなんだと思いますか。
MC松島:
本当に何と無く口ずさんでいて、そこから、「どうやら韻を踏むって決まりらしいぞ?」「宅録しなきゃいけないらしいぞ?」ってそのまま変にルールを守っていくうちに今に至ってますね。
ライブもしなきゃいけないし、バトルもしなきゃいけないしみたいな(笑)。
バトルに比重を置くことはあり得ない
──正直な話、バトルとバトル以外(制作やライブ)のものとどちらが好きなんですか。
MC松島:
今は全く違う人種の人たちが別々にやってる印象も強いですが、僕は全て含めてヒップホップだと思いますね。
ヒップホップが好きです。
アメリカのも日本のもネットのも現場のも、好きな一つの物の持つ一面として捉えています。
ただ、バトルは流行やルールの循環が遅すぎてつまらないですね。
その辺のパーティーで去年と同じセットのDJはあり得ないのに、バトルはそれがまかり通っている。
そういう点以外にも、お互いが見習うポイントがある気がしますね。
──高校生ラップ選手権で日本のヒップホップも盛り上がりを見せてきそうな気配を感じますがMC松島さんの環境も変わりましたか?
MC松島:
物凄く変わりましたよ。
というか良い変化しかないですね。
お客さんは増えたし、若いラッパーも増えたし。
選手権は別に僕の手柄じゃないですが、年下のラッパーが増えて、年上になっただけなのに、突然オールドスクーラーにされて良い意味で歴史上の人物みたくなりましたね(笑)。
──フローや言葉のチョイスなどでバトルとバトル以外のものを使い分けたりしているのですか。
MC松島:
根本的には変わらないと思いますが、バトル以外のヒップホップの歌詞の方が分かりづらくても許される分、緻密にはなりますね。
バトルの場合は勝利のためにラップしているし、お客さんに理解されないといけないんで、一回勝負なんで分かりやすくせざるを得ないです。
悩んでいる時間を良い時間に変換させる
──今後は音源を出していくのか、バトルに比重を置くのか、どういった活動をしていこうと思っていますか。
MC松島:
バトルに比重を置くことはあり得ないです。
個人的にバトルに勝つための努力とか全く興味ないですね。
そんな事よりも、良い曲を作って良いライブをして、みんなを恐怖から救ってあげたいですよ。
現在、アルバム製作中です。
──みんなを恐怖から救うっていうのは。
MC松島:
みんな恐怖とか不安とか抱えて生きてると思うんですけど、僕の曲を聴いて少しでも楽になったら良いなと思いますね。
悩んでいる時間を良い音楽を聴いている時間に変換させるというか。
そして、個人的にはどう考えてもこのことがバトルよりも有意義に思います。
──なるほど。なんとなく始めたラップだったけど、MC松島さんの中にラップをする動機みたいなものが芽生えてきたということなんですね。そう思えたきっかけって何ですか。
MC松島:
曲を聴いてくれる人が増えてきたっていうのと、昔は全く理由なくて漠然と「交通事故減ったらいいよなー」とか言ってましたけど、今は聴いてる人に何か届けたい気持ちがありますね。
アルバム作品を出す責任ってそういう部分だと思うんです。
実際ビートルズとかと同じ棚に並べられる商品なんで。
──アルバムは今年中には発売される予定なんですか。
MC松島:
一応年内に出す予定です。
アルバムを作ってみて分かったんですが、結構大変ですね。
今までフリーで出した曲の10倍くらいは一曲に時間かかってます。
それこそ誰かに救ってほしいです。
他のどのCD作品とも遜色がない物を出したいです。
日本語ラップ難しすぎます。
──アルバムの客演やビートメイカーなどを言える範囲で是非。(KZさん@KZ_THRが質問)
MC松島:
トラックは大体決まってます。
──音源でいいますと、ブーストコンピ4で2曲参加という裏技みたいなことをしていますが(笑)。
MC松島:
一曲目はとにかくブーさんを泣かせようと思いましたね。
二曲目は歌う事が無いってのがテーマですね。
──ブーさんを泣かせようとか、批判に対しても「ありがとうございます」と返したり。MC松島さんて自分のことをあまり出さないというか、表に出てこないというか。もっとこういう、せっかくの機会に自分を出してやろうとかは思わなかったですか。
MC松島:
確かにそれはそうですね。
本当の自分はめっちゃ嫌な奴なんで、それを隠したい気持ちが強いのかもしれません。
いきなり、核心つかれた感じがしました(笑)。
アルバムなど音源ではなるべく自分を出して行きたいですね。
──いい意味でその嫌な奴が見え隠れしていて不気味さを出しているのがMC松島さんだと思います。自己を俯瞰してみてみると本当の自分はどういう人物だと思っていますか?
MC松島:
褒められてる気が全くしないですが、皆おおよそそんな印象でしょうね。
僕は本当に弱い人間だと思いますね。
なんの才能もないし、惨めな人間だと思いますよ(笑)。
──その弱さを作品にしようとしているというのは、楽しいだけの作業じゃないですよね。だからこそアルバムが楽しみですね。
MC松島:
弱さを作品に反映させるのって実はあんまり好きじゃないので、強がってばかりいる様なアルバムになると思いますね。
面白いと思う事をやりたい
──ところで、北海道のヒップホップシーンの盛り上がりは。
MC松島:
北海道は才能あるプレイヤーが沢山居ますが、離島なんで色々大変ですね。
イベントに県外の人が来るとか、めったにないですし。
札幌はクラブが10件もないかもしれませんし、小箱が多いですね。
それでも、ヒップホップ以外も含めればイベントは毎日やってるとは思います。
──北海道のシーンを盛り上げようという思いも強いのですか。
MC松島:
それが実は結構悩みなんですよ。
地元のシーンが大きいと心強いし楽しいけど、ビジネスとかアートって意味では現場に人を集めるって時代錯誤なんですよね。
すごいバランスが難しいです。
僕個人は正直ネットがあれば活動出来るけど。
北海道のシーンのためって言っても結局個人個人の話ですからね。
僕が一人で勝手にめっちゃ売れればシーンのためにもなるだろうし、他人にどうこう言うつもりは余りないですね。
──ネットといえば「♯松ストリーム」なんてものもやっていますよね。あれは、どうして始めたんですか。
MC松島:
単に売名ですね。YouTubeの広告でも勧めてくるし。
──売れたいって気持ちは凄く強いんですね。
MC松島:
売れたいってよりは自分が面白いと思う事を好き勝手やりたいって感情ですね。
そのためには、お金も人気ももっと必要なんです。
本当に売れたくてこんなペースで活動してたら才能無さすぎだと思いますね。
──売れるために活動のペースを上げようとは思わないのですか。
MC松島:
今年はペース上げます。
フリーの物も売り物もたくさん出したいです。
そして、トウキョウトガリネズミっていうレーベルも始めます。
個人でもレーベルでも、とにかく面白い事をやりたいですね。
──レーベルの動きも熱いですね。MC松島さんだったら自分でレーベルを始めなくても他の既存のレーベルからも声がかかると思いますが、なぜレーベルを始めようと思ったのですか。
MC松島:
なんとなく自分と仲間でやる方が楽しいかなって思いました。
あと、今年はレーベルゲームの年になると思ったんで、僕もエントリーしなきゃと思ったんですが、上半期あんまりそれらしい動きが無いですね。読み違いでした。
今年発足したレーベルでは間違いなくうちが最強だと思われますね
──レーベルにはMC松島さん以外にもアーティストが所属予定なのですか。
MC松島:
これまだ誰にも言ってないですが、すでに10組くらい決まってます(笑)。
楽しみにしてて欲しいです。
──10組は凄い。続報に期待ですね。
この前上げられていたMVをvimeoから上げていましたが、どうしてYouTubeに上げなかったのですか。
[MV]MC松島 & DJ MICKEY – Run This Town feat. 072, DOMINO-P from Jazadocument on Vimeo.
MC松島:
vimeoの方が見た目がかっこいいってのと、詳しく分かりませんが画質が良いまま上げられるだか言ってましたね。
あと、まだYouTubeに比べて使ってる人も居ないし、かっこいいかなーと思って(笑)。
──最後にMC松島のここを見て欲しいという部分があったら教えてください。
MC松島:
今年はアルバムを絶対チェックしてほしいです。
あと司会でも文章でも何でもやりますので気軽に連絡欲しいです。
断らない力は絶対に業界ナンバーワンです。
あとは、制作スピード上げてきたいんで宜しくお願いします。
プロフィール
【MC松島】
北海道札幌市出身、在住のMC、ラッパー、漫画家、映画監督。
87年生まれ、山羊座のO型。好きな食べ物は牛タンと生野菜。
最近では仙台牛中毒に陥ってしまい、常にいつ起こるか分からない発作と戦いながら生活をしている。
お気に入りの日本語ラップ・クラシックは「いとうせいこう & TINNIE PUNX – 東京ブロンクス」である。
2014年UMB札幌予選優勝、全国大会ではベスト8。
2015年のエイプリルフールにはインディペンデントレーベル「トウキョウトガリネズミ」を立ち上げる。
IQ200の頭脳を駆使して、とにかく面白い事をしたいという男である。
無数の無料作品をインターネット上に公開しており、未発表曲のストックは1万曲にものぼる言う。
全貌は謎に包まれているが、その世界レベルのラップスキルから、彼がただ者では無い事が明らかである。正体がばれる日も、そう遠くはないはずだ。
Twitter@matusima2323
【OTFJ】
2人組の映像制作ユニット
餓鬼レンジャー、RAq、空也MCなどの国内アーティストだけではなく、オーストラリアのヒップホップデュオLHAなど多数のMVを制作している。
〝心に残る映像を〟この思いを胸に映像制作を続けている。
またアーティストのトータルサポートを目指しインタビューやイベントレポートなども手掛ける。
企業のイベントレポートやVP制作依頼も随時受け付けている。
公式HP:http://otfjmovie.flavors.me
Twitter:@OTFJMOVIE
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