金利低下を折り込む債券市場と、それを懸念するFOMC議事要旨

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はじめに

FRBの議事要旨が発表されました。その中で、市場が2023年後半の利下げを織り込んでいることに対する懸念が述べられています。今回はこちらについて取り上げていきたいと思います。

written by @raq_reezy

FRB議事要旨は緩和を折り込む市場に懸念

FRBの議事要旨というのは、前回のFOMCでどのような議論が行われたか内容が公開されるというもので、12月のFOMCの議事要旨が今回公開されました。

以下、ブルームバーグからニュースを引用します。

議事要旨は「正当な根拠のない金融状況の緩和は、特に委員会の対応に関する世間一般の誤解に基づくものである場合、物価安定を回復する委員会の取り組みを複雑化させる」との認識を参加者は示したと記した。JPモルガン・チェースの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏は「今年下期までに利下げが行われる可能性を市場が織り込みつつあることが、当局のこのメッセージにおける最大の懸念材料だ」と、ブルームバーグテレビジョンで指摘。インフレの水準が高過ぎることを踏まえ、当局は「引き締め過ぎのリスクは受け入れて我慢しなければならないものだということを認識している」と述べた。

もう少し噛み砕いて説明します。

まず、FRBはインフレを抑えるために、金利を上昇させることを通じて、景気を冷やしたいと思っています。そのために、FF金利をどんどん上げているわけですが、FRBが直接操作することができるのは、あくまでも超短期の金利であるFF金利だけです。

短期金利(ex. 2年国債)や長期金利(ex. 10年金利)に対しては、市場参加者に「利上げをしていくよ」とメッセージを伝えることで、「超短期金利が上がるなら、短期金利や長期金利も上がるのが筋だろう」と思わせて、債券を売らせる(金利を上昇させる)必要があるのです。

しかし、現在は少し状況がねじれています。FRBは「景気が冷やすために、利上げをするよ」というメッセージを発していますが、「利上げをするよ」というメッセージは長期金利を上昇させる方向に働く一方で、「景気を冷やすよ」というメッセージは長期金利を下落させる方向に働きます。言い換えると、市場参加者が「利上げするなら、債券を売ろう」と思えば長期金利は上がりますが、「利上げで不景気になるなら、株ではなく債券を買っておいた方が良いな」と思えば長期金利は下がってしまうのです。

以下の順番で物事が進むとして、FRBは1を市場に織り込ませたいのに、市場参加者は2がいずれ来るだろうと見込んで、3を織り込みはじめているということです。

  1. FRBの利上げによって金利が上がる
  2. 金利が上がることで景気が悪くなる
  3. 景気が悪くなることで金利が下がる

これがFOMCで議論された「正当な根拠のない金融状況の緩和は、特に委員会の対応に関する世間一般の誤解に基づくものである場合、物価安定を回復する委員会の取り組みを複雑化させる」の正体です。

インフレ低下を折り込む債券市場

そのため、FRBは「インフレを抑え込むために利上げをする」というメッセージを繰り返し伝えているにも関わらず、米国長期金利はすでにピークアウトしています。

米国10年債金利(2023年1月5日)

米国10年債金利(2023年1月5日)

年末にかけて、少し反発していましたが、年明け以降はするすると下がっています。

インフレ率自体は低下を続ける兆候が見られていますし、未来を織り込みにいくマーケットにとっては、今回のFOMC議事要旨発表も「材料出尽くし」となる可能性があります。

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アメリカにおける2022年末のインフレ沈静化状況を振り返る

2023年1月4日

結論

さて、僕の考え方は、以前の記事に書いた通りです。

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もう一度、上で書いた、FRBと市場のズレを確認したいのですが、FRBは1を織り込ませたいけれど、市場は3を織り込んでいると書きました。

  1. FRBの利上げによって金利が上がる
  2. 金利が上がることで景気が悪くなる
  3. 景気が悪くなることで金利が下がる

さて、市場は2023年後半の利下げを織り込みはじめているわけですが、今後、実際に景気が悪くなってインフレ率が下がるのであれば、その織り込みは間違っていないことになります。その場合、いつまでも「インフレを必ず退治する」と言っているFRBの方が未来の実態からズレていることになります。

では、どちらが正しくて、どちらが間違っているのでしょうか。その結果確認は、究極的にはインフレ率の数値自体を追っていくしかありません。しかし、「インフレは一時的だ」といって今の状況を招いたFRBが”未来を正しく予測できる”とは市場参加者は考えていないわけです。市場参加者の未来予測を知るには金利自体を見るのが手っ取り早いですが、さらに定性的な情報が欲しければ、ガンドラック氏の見解等が参考になります。

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ガンドラック氏:米国景気が良くなる理由が見当たらない

2022年12月29日

また、伝説のマクロ投資家ドッケンミラー氏の言うように、個別企業をウォッチすることも参考になるでしょう。

株式マーケットは未来の経済活動について最新の情報を持っている。理由は定かではないが、株式は6〜12ヶ月ほど先回りする傾向がある。さらに先を読むのであれば、経済活動を先回りしたり遅れて動く業界を見ることもできる。住宅業界や小売業界などがある。マクロ投資家と呼ばれるが、私たちは個別企業の様子を聞いて、ボトムアップでマクロの経済観を組み立てている。経済を先回りする業界が上がったり下がったりすれば、それは美しいシグナルだ。

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ドラッケンミラー氏:グローバルマクロ投資は12〜18ヶ月後の世界を想像する

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例えば、住宅建築販売大手のレナー社CEOは、住宅の新規建築は絞られているので、今年の第二四半期頃からは住宅業界の雇用に影響が出るだろうとしています。

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米住宅市場大手レナー社決算:来年の第二四半期には賃金が下がり始める。住宅の供給不足は長期的に続く

2022年12月26日

これらを踏まえて、また実際にインフレ率は低下しているわけなので、僕はその傾向が続く限りは、金利が下がる方向にポジションを立てておいて良いと考えています。つまり、引き続き、債券+株の買いポジションを維持しています。

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