「矛盾を表現するには一面だけを描く事はできなかった」。MC松島『病気EP』、発売記念インタビュー。

公開日: インタビュー, ニュース ,

9月15日にMC松島氏とA-QUIK氏の共作によるストリートEP『病気EP』が発売されます。

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これは、札幌のラッパーMC松島と旭川のビートメイカーA-QUIKによる作品集である。

実はA-QUIKは過去に脳出血で倒れ生死の境を彷徨った事がある。

奇跡的に一命を取り留め、今では元気に制作を続けているが、後遺症として左半身運動失調、言語障害、めまい等の症状がある。倒れた直後は右半身麻痺という重い症状も有ったが、キツいリハビリの上に克服している。

A-QUIK作詞によるm.1「2012年6月7日」は正に倒れた瞬間の事を歌にしたモノだ。

そして、なんと!今回は言語障害が残るA-QUIK本人による歌唱バージョンも収録!言語障害者によるラップは日本はおろか世界でも非常に珍しいのではないだろうか。(後略)

 

今回は、発売を記念して、MC松島氏に特別インタビューを行いました。

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矛盾を表現するには一面だけを描く事はできなかった

RAq:今回のEPでは、1曲目の”2012年6月7日”で、今回トラックメイクを担当されているA-QUIKさんが脳出血で倒れた日の実際の体験を、松島さんが一人称でラップしています。また、それをA-QUIKさん自身がラップしたバージョンも収録されています。3曲目ではダースレイダーさんを客演に呼んでみたりと、病気というものを表現するにあたって、リアリティを伴わせようという松島さんの意図がすごく感じられます。

一方で、一度も入院したことがないという松島さんが「やっぱり具合が悪いとみんな優しくしてくれるっしょ。早くなりたい、体調不良。」みたいに、敢えて不謹慎なラップをして、それをダースレイダーさんが「FAKE病人」と茶化す一面もあったりと、病気というものを多面的に捉えるEPに仕上がっていると思うんですね。ただ、その分「結局、松島は何がしたかったんだ。」という感じ方もあると思うんです。

そこで、もしよければ、今回のEPのコンセプトというものを少し説明していただいてもよろしいでしょうか。病気を色んな方向から描くことには、どのような意図がある、または無いのでしょうか。

 

MC松島:まず、「病気」ってネガティブなモノでしかないはずなんですが、一切病気が無くなると、医療関係の人とか薬屋さんとか、仕事が無くなる人も大勢居るだろうし、また僕達も、恋人が難病になるラブストーリーに感動したりだとか、そういうモノも現に有り触れているわけです。

そういった矛盾を表現するには一面だけを描く事はできなかったんです。

人の不幸をおもしろ可笑しくビジネスにしたり、かかった事ない病気に怯えて生活する事は決して美しい事じゃないですが、そう感じる事が出来るのも今、健康に暮らしているからであって、矛盾も有るけど普通に生きて、普通に生活をしてる事って恵まれてる事だなと思います。本当にヤバイ時は悩む暇すら無いでしょうからね。

ネガティブな事も沢山あるけど、それも見方を変えればポジティブになるし、そうやって何かを乗り越えて生きて行く中で、このEPを聴いて少しでも下らない気持ちになって貰えれば嬉しいですね。

またA-QUIKもダースレイダーも一度死にかけて、今は元気に復活を遂げています。勿論、ずっと何事も無く暮らせる事がベストですが、そんな彼らから何かパワーを感じて貰えると思います。

 

RAq:そうしたコンセプトは、どのように着想されたのでしょうか。A-QUIKさんとの出会いも関係がありますか。

 

MC松島:一番は単純に「マジで死にかけたしA-QUIKと何か作りたいな」っていうシンプルな動機なんです。なので、一番のコンセプトは「俺もお前も色々有ったけど、生きてて良かった!」みたいな所にあるのかもしれません。

僕は特に何も無かったんですけど(笑)。

それも、大げさに言うと、人はいつ死ぬか分からないから、とりあえず作ろうっていう感じでしょうか。実際これを読んでる人だっていつ死ぬかは分からないわけで、そんな状況なので、全体を深く考えてコントロールする余裕は無かったし、こんな鋭い質問をされるとも思ってなかったので、今回は殆どそれらしい後付けになりますね(笑)。

常に死と隣り合わせっていう実感が無いのは幸か不幸か分かりませんね。実際は毎日がそうな訳で、ちょっとした遅刻や物忘れも、死と隣り合わせなので大目にみて欲しいですよね(笑)。

こう言うと大げさですが、今日だって何人もの人が亡くなってるんですよね。こうやって昨日の続きをプレイできる事に感謝したいですね。

 

RAq:A-QUIKさんとはどのように知り合われたのでしょうか。

 

MC松島:A-QUIKは元々札幌在住で、昔からの友人でした。詳しいプロフィールは僕も分からないのですが、たしか彼は僕の2歳上くらいだったと思います。

A-QUIKは脳のダメージから体が上手く動かせなくなって、筋力トレーニングやボーカルトレーニングのようなリハビリをやってたそうです。今でも一部トレーニングは続けてるみたいですが、その甲斐有って、普通のラッパーより味の有る良い声が出てると思います。こんな事言ったら本人に怒られそうですが、ラップする事という一点だけに限れば少し羨ましさもありますね。

アートの面に限ると、アスペルガーとかサヴァンの人達を素直に羨ましく思ってしまう事が有るんですが、人間って結局は無い物ねだりなんですよね。彼らも普通に暮らしてみたいって思ってるでしょうし。だけど、僕が日常に支障が出る程の何かを持っている時に、彼らや今の僕以上に音楽活動をやれていたか?と言うと、決してそんな事ないと思うんですよね。強い人リスペクトです。

そして、それは世界の全ての人に言える事で、そいつが今どんな気持ちなのかなんて誰にも分からないんですよね。杖付いて歩いてるからとか抜きで、マジでどんな奴にも親切にしたいですよね。

 

RAq:2曲目の”ガレージバンド”は「お前は俺のケツの穴をクリエイティブに舐めな」という、最近の”クリエイティブは正義”みたいな風潮を小馬鹿にした感じのフックが面白いなと思ったのですが、これは唯一病気と関係ない曲な感じがしました。実際のところは、どうなんでしょう?(笑)

 

 

MC松島:これはもう数年前になると思うんですが、僕がFacebookに「楽器屋がひどいから曲を作るぜ!」っていうような内容の投稿をしたんです。そのまま何もせず数年が経ち、今回の制作が始まったんですが、A-QUIKがそのエピソードを気に入っていたみたいで「あの楽器屋の曲を本当に作ろう!」と言ってくれたんですね。昔の事なんで僕はすっかり忘れていたんですが、アイデアなんてまあ、そんなもんですよね。

そして、この曲も広い心と目で見ると、「病んでる社会」みたいな感じになるかなと思ってますね笑。反物質主義っていうテンションでも見れるし、逆に店員さんの立場からすればコミュニケーションが取れない変な客とすれ違うっていう風に考える事も出来ると思います。一応付け加えると、僕は決して変な客では無いですけどね。

個人的には消費者に力を持たせすぎてて、最近の客商売は本当に病んでると思いますね。めちゃくちゃ美味いけど、ろくに接客せず、注文が出て来るのも遅いみたいな飲食店にシビレますね。そういうラッパーで有りたいです。ハードコアです。

 

RAq:なるほど。では、最後に松島さんの今後の活動予定は何か決まっているものがありますか。

 

MC松島:僕はミニアルバムをどんどん作っていて、実はこれの次と、その次も殆ど完成してます。

フルアルバムの前に色んなアップグレードが必要かなと思って、勉強と修行のために小さい作品を沢山作ろうかなと思ってますね。フルアルバムの制作にも着手してます。

長くなってしまってすみません。とても楽しかったです!

また機会があれば是非よろしくお願いします!

 

MC松島 & A-QUIK – 病気EP

mcmatsushima

【トラックリスト】

1.2012年6月7日

2.ガレージバンド

3.病気怖い

4.ありがとう病気 feat. DARTHREIDER

5.ゆ (Dub version)

6.ガレージバンド (A-QUIK Remix)

7.病気怖い (A-QUIK Remix)

8.ゆ (Original version)

9.ゆ (A-QUIK Remix)

10.2012年6月7日 (A-QUIK version 1st take)

11.2012年6月7日 (A-QUIK version)

 

words by MC松島

music by A-QUIK

1,10,11 written by A-QUIK

All Recorded Mixed & Mastered

by Mister Bee at FlagShip Recordings

 

MC松島 Twitter(https://twitter.com/matusima2323

A-QUIK Twitter(https://twitter.com/a_quik

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