“ホンモノ”が本格的に動き出した。
知る人ぞ知る存在だった游久が、5ヶ月連続のEPリリース。
そして、来年にはアルバムの発売も予定されていて、一気にギアを上げてきた。
游久のラップには優しさを感じる。
きっと、自分に正直だからこそ出てくる言葉がそこにはあるからだろう。
30代でもまだまだ音楽は続けられると勇気付けられる存在だと思う。
text by OTFJ
僕の前にオケがある
──まずは自己紹介をお願いします。
游久(ゆ~きゅ~)です。
熊本生まれ、熊本育ちで31歳です。
──ラップを始めたのはいつ頃からですか。
ラップを始めたのは15歳からです。
当時は日本語ラップがバブルで、人気が本当に凄くて、それに乗っかった感じです。
──影響を受けたアーティストは。
色んなジャンルの人達に影響を受けましたね。
例えば小室哲哉だったり、中学、高校生の時に自分が住んでいた隣の部屋がスナックだったのですが、そこから夜な夜な聞こえてくる日本のメジャーなムード歌謡だったり。
ラップで影響を受けたのは、餓鬼レンジャーのリップサービスモンスターや、RINO、ブルーハーブ。
他にも詳しくあげるとキリがないですが、どんなジャンルでもカッコいいなと思ったら、すぐ真似したくなってました(笑)。
──普段はどういった活動をされてるんですか。
九州の先輩のGROWTH MUSICがオーガナイズするGROWTH CAMPというパーティーで、2か月に一回、渋谷のR-lounge というクラブでライブをしています。
スナックや、ショーパブなんかでもライブをしたり、活動の幅を広げていきたいですね。
新しいですよね。流しスタイル。
あと、今はアルバムの制作に精を出しております。
──游久さんの曲を聴くと優しさに溢れているという印象を持つのですが、曲作りで意識していることは。
とにかく嘘をつかないようにということを気をつけています。
これは、「言葉の部分の嘘」ではなくて、「気持ちの部分の嘘」をつかないようにする、という事です。
オケを聞いていて色んな情景が出てくるんですが、イメージとして、僕の前にオケがあるとオケに引っ張られて、それっぽいことを言ってしまう。
だから僕の背景にオケがあるイメージで言葉を置くように心掛けてます。
普段の生活が制作ですね。
──「自分はこういう音楽を目指すんだ」と意識していることはありますか。
たくさん引き出しのある音楽がやりたいです。
例えばバンドも組んで、フェスでライブをするのも夢です。
音のビジョンはまだはっきりは見えないのですが、得意の背伸びでずっと挑戦はしているので、アルバムで形を見せられると思っています。
ゆ~きゅ~(游久)/祝三十路 『EVISBEATS/カラパタール』BEAT JACK
https://www.youtube.com/watch?v=nlOPpm1dmlk&feature=youtu.be
自分自身の弱さを受け止める
──游久さんは餓鬼レンジャーのポチョムキンさんと音源を出していたり知る人ぞ知る存在ではあったと思います。
それが最近は、EPを5ヶ月連続で出したりMVを複数発表したりと急に活動が活発になった気がしますが変化があったのでしょうか。
ソロのアルバムを発表したい、それを待っている友達や周りの人に喜んでほしい、そして、何よりアルバムを作って自分が喜びたい、という思いがずっとあります。
だけど正直なところ、自分は、このまま何もできずに終わっていくと思いました。
そういう中で、発表の仕方は色々悩んだのですが、ソロの游久という存在を知ってほしいという思いから、5ヶ月連続 動画付きEPの発表となりました。
──とてもストイックですね。
東京の生活の中では、自分を信じる反面、自信の無さが露呈しまくっています。
何か先が見えない恐怖と、人の目を気にして周りに良く思われたいとか、自分のダサい部分ばかりに目がいくようになりました。
多分、この負のルーティンみたいなものは 自分がやろうと決めた事をやらないと変えれないんだと思いました。
「何となく」で甘えているんです。
頑張っているとか頑張っていないとかは全然関係無いなと思って。
──音楽で生活をしたい思いが強いんですね。
生活の柱だったバイトも辞めて音楽だけで生きたいと思いました。
音楽だけにしてしまえば、その道が開けると思って路上ライブも始めました。
まだ諦めてはいないものの、結局自分に負けて、気持ちの部分で最後の一歩を踏み込めませんでした。
周りに期待ばかりして、自分の部分が弱いですね。
まずは自分自身、弱さを受け止めて、今やれる事を一所懸命にやろうと思いました。
どうなるか分かりませんけど(笑)。
『portfolio –ちょうちん日記–』
http://firestorage.jp/download/22c78f4bcc340af9b402e71fa557299af927c243
気持ちが一番大事
──游久という名前の意味は。
兄がつけてくれた名前なんです。
兄は兵庫県の沢庵寺(宗鏡寺)の住職をしてまして、その兄がまた凄い人なんです。
米俵と飯盒を担いで日本中歩いたり、山籠もりの修行だったり、考えられないくらいストイックな人なんです。
歴史と伝統を重んずるオフィシャル坊主みたいな感じですね(笑)。
ある意味、縁起物ですよね。
兄に游久の意味を聞いたら「多くの人達と、久しく会いながら遊ぶ男」だそうです。
ただのロクデナシじゃねーかと(笑)。
──実家がお寺さんだったんですか。
実家は熊本の天ぷら屋です。
僕は4人兄弟の末っ子なんですけど、2番目の兄が中学1年の頃、京都のお寺に出家しまして、それから兄はずっとお寺で生活しています。
それで、今のお寺を引き継いだ感じですね。
──子供を出家させる両親も思い切ってますね。
熊本では頑固な人の事を 「肥後モッコス」 といって名称が付くほど昔気質な人が多いのですが、父もそんな感じです。
よその子でも怒鳴り散らすみたいな(笑)。
でも両親とも本当に優しい人達なんですよね。
何かをやりたいと言った時に反対された事は一度もありませんでした。
──お兄さんがお坊さんということが游久さんに影響を与えてる部分もありそうですね。
坊主をしている兄の影響は大きいですね。
兄は、とにかく自分に厳しく、他人に親切なんですよ。
仏道の教えにもあるようなのですが、見返りを求めない親切というものを本当に体現しているような人です。
時には自分の命を危険にさらして修行を行うと、兄の坊主仲間から聞いた事があります。
そんな兄のやる事はお寺の世界でもちょっと尖っていて、襖絵を漫画家の方に依頼したり、色んなアーティストの方達とコラボしてお寺でコンサートしたり、兄も一度フランスで作曲家のツトム ヤマシタさんとのコラボでお経をあげてました。
──とても行動力がありますね。
迷った時など、こんな時に兄だったらどうするかと、よく考えますね。
兄は人に何かお願いをする時には、会えるかわからないのに、どんなに遠くてもお寺から歩いてその人の所まで行っていました。
人に感謝するというのはそんなに容易い事ではないんだなというのも感じますし、気持ちが一番大事だという事を言葉なく教えてくれます。
近くにそんな人がいてありがたいですね。
──30歳を超えると自分が見えてきて夢を忘れる人も多いと思います。
同年代の人にメッセージはありますか。
お恥ずかしながら、30歳を越えて、「全部自分次第だ」という意味がやっと分かってきました。
何をするにしても自分の選択で物事が進んでいくと思います。
僕は「自分で選んだから一所懸命やる」という風に、夢に対しても このくらいシンプルに考えるようにしたいです。
同年代の友達を見ても、みんなやっている事も多種多様なんですが、夢という言葉を使わなくなってきたのかなという印象です。
生きていくなかの場面場面で、色々なことが削り落とされて、こうなったらいいなぁとか、こうなりたいなぁとかが明確になりすぎてくる年頃というか。
メッセージを送れるような人間ではないのですが、送るとするならば、「迷わず行けよ、行けば分かるさ。」
完全に誰かの言葉ですね(笑)。
しかも、これ自分に言っています(笑)。
──今後の活動予定を教えてください。
今後はリリースが続きます。
5ヶ月間連続でフリーのEPを出していくのですが、
自分は歌うことしかできないので、本当に沢山の方に協力して貰っています。
フリーなのですが、全然、手は抜いていないので是非聞いてみて欲しいですね。
そして、来年にはアルバムを発売します。
楽しみにしていて欲しいですね。
Raindrops~雨男のボヤキ~/ゆ~きゅ~(游久)
https://vimeo.com/146500425
portfolio-ちょうちん日記–黄』
http://firestorage.jp/download/5d1af81ef15a3008913c91b5c36f24ad85a07e27
※プロフィール
【游久(ゆ~きゅ~)】
これまでにiTunesで(東京散歩 dioramadorama TALKINLOUD StearDays)の配信。
全国流通盤では餓鬼レンジャーのアルバム、KIDS RETERNのWONDER⒎に参加。
随喜とゆ~きゅ~(餓鬼レンジャーのポチョムキンとのユニット)で『雨宿り』という自主制作アルバムを発表。
2015年10月よりフリーダウンロードEP+MV を5ヶ月連続配信中。
2016年 自身初のソロアルバム発売予定。
【OTFJ】
トウキョウトガリネズミ所属
2人組の映像制作ユニット
餓鬼レンジャー、RAq、空也MCなどの国内アーティストだけではなく、オーストラリアのヒップホップデュオLHAなど多数のMVを制作している。
〝心に残る映像を〟この思いを胸に映像制作を続けている。
またアーティストのトータルサポートを目指しインタビューやイベントレポートなども手掛ける。
企業のイベントレポートやVP制作依頼も随時受け付けている。
コメントを残す