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『YEEZUS』でカニエが提示したかったのは、芸術としての音楽の再興だった
ラジオ向けの曲調に寄り添わず、200年後に聴いて傑出しているアルバムを目指した
Zane:
どうぞ座って。
このスタジオ覚えてる? Graduationの時だっけ?
僕はそれよりも、別の回のインタビューの方が印象に残ってるけどね。
BBCのアビーロード会場での。
Kanye:
あれはよかったね。
でもあのスーツは、今なら別のものを着るね。
別にスーツがいけないって訳じゃないけど、襟のバラはなくてもよかったと思う(笑)。
Zane:
ははは(笑)。
君は君の全てを出していたよね、あんなにも人が居る中で。
君に批判的な意見を持ってる人も居たよね。(まだ2枚しかアルバムを出してない時に沢山のオーディエンスや批評家の前で自分をビートルズと例えたりして大きく見せた出来事があった。)
あのアビーロードの件について今思い出してみてどう感じてる?
凄かったよね。
Kanye:
俺はいいと思ったよ、俺はあれが当時、自分のするべき事だと思ったんだ。
もし自分に機会が来たら、それをつかむのさ。だって、いずれはみんな死ぬんだ。
Zane:
その通りだね。
Kanye:
そうだろ、だからそのように生きるんだ。
明日死んでもいいように生きるんだよ。機会が来たらそれをつかむ。
そうした一つ一つの機会や場面が俺をこんなに遠くまで運んだのさ。
Zane:
そうして、君は今ココに居るわけだ。
6枚の自身のオリジナルアルバムと、Throne(Jay Zとのコラボアルバム『Watch The Throne』)と、色んなコンピアルバム。
このYeezus、素晴らしい出来だと思う。本当に凄いよ。
実際、僕がここ長い間に聞いた中で、どのジャンルの中でも最高傑作だって気がするんだ。
君もアルバムが出来あがって、興奮してるでしょ。
Kanye:
ありがとう。
今回も自分の頭の中にあった事をそのまま形にする事が出来たんだ。
今の流行の感覚とかに惑わされずにね。
『Cruel Summer』(コンピアルバム)とかはまさにKanye Westって感じだっただろ。
“Mercy”(曲)にはキーを少し外したようなちょっと変な高いピッチの音とか入ってて、ちょっとアートな感じもする出来上がりだった。実際のところは、アートというよりは、隠すまでもなくラジオでスマッシュヒットする曲だったんだけれどね。
でもTrap Drumというアイデアを俺が取り入れたりとか、ラジオで流行りそうな音楽を作るときっていうのは、やっぱり今の流行の音っていうものの影響が入ってしまうんだ。
でも例えば200年後に聴き直したときには、808sやYeezesのように傑出しているってことはないだろ?
200年後、みんなにあれを強く薦めたり再定義したりして、「これ凄く好き」とか「凄く嫌い」とか言わせるのって難しいと思うんだ。
だから、俺は今回、別の考え方をしたんだ。
人は普通の16節とか8節の曲構成に縛られてるだろ、ありきたりなラジオ向けの曲構成にね。
この前、Feank Oceanと話してたときに、彼は「俺のママは座り込みの抗議(sit in)で逮捕されたんだ」なんて言ってたんだ。
でも、俺はむしろもっと、なんというかラジオ向けの曲から離れる(sit out)なり、距離を置く(sit off)なりして、「おいラジオ!お前らから俺たちの方に寄って来いよ」て言いたいんだ。
俺たちは何か新しい方法を見つけなきゃ成らない。だって、圧倒的な曲を作れる、素晴らしいアーティストが、コントロールされて商品化されて、自由に成功できないような仕組みに成っていたからね。
Zane:
なるほど。じゃあ、ラジオ向けの曲から距離を置くっていうのは、君にとっては義務の様に感じられたの?
「皆が君の言う事や音楽に耳を傾けている中で、もし自分がオーディエンスにも対しても挑戦しない、ラジオに対しても挑戦しないってなら、俺は一体何をしてるんだ」って具合に。
Kanye:
うん、俺は自分を停滞させないようにしてるんだ。
俺は完璧なアルバムは作れるんだって事は既に証明できたと思ってる。『My Beautiful Dark Fantacy』は完璧だった。おれは完璧なアルバムを作る方法を知っているんだ。
だけど、今回はそれをやりたいんじゃなかった。
おれは整えられたレールをぶち壊して、新しい地盤を作りたいんだ。音的にも社会や文化的にも。
Zane:
君はそれをYeezesでやってのけたと思うよ。
僕は今回、こうやって君とアルバムについて話せる事にとても感動してるんだ。だって普通はアーティストとアルバムの事について話すときって、まだアルバムがリリース前だったりするでしょ。オーディエンスがアルバムを聴いてないと思うと、僕はどんな感じか探りながらアーティストと話しをしなければならなくて、なんか予想当てゲームをしてるみたいなんだ。
でも今回はリリースされてから時間が立ってるから、君もオーディエンスが『Yeezes』をどう捉えたか知ってるよね、いい意見も悪い意見も含めて。
君自信はどう『Yeezus』をとらえてる?
Kanye:
俺は自分の事をプロダクションの男だと思ってる。俺は生産者なんだ。
だから、もし俺がJohn Legendのアルバムをプロデュースするなら、John Legendにとって一番居心地のいい場所を提供する様にする。それからPusha Tを押すなら奴の音楽で俺が一番好きな所を全面に引き出すんだ。そして、俺自身Kanye Westとしてはぶちこわさなきゃいけなかったんだ。
Zane:
ははは(笑)。
でも、本当にぶち壊したよね。
アルバムが始まってすぐのこの音ヤバいよね、この音。
それを作ってる時はもうあのロフトにいたと思うんだけど(kanyeはyeezesの制作をパリのホテルのロフトで行っていた)、これはアイデアを試しながら、それぞれを繋げたりして、あ!これが探してた音だって思ったの?
Kanye:
これはDuft PunkのThomasとGuy-Manuelのスタジオに行って、奴らがスタジオにあの壁一面くらいのシンセを持ってたんだけど、適当にセッションしてたときに出来たものの一部だね。
このビートは元々14分くらいの長さで、あれはちょうどディストーションをかけまくった所で、それをなんとなくイントロにしたんだ。
「ドラッグある?音楽ある?お酒も準備した?」と消費される音楽よりも、人に影響を与えてしまう芸術作品としての音楽を作る
Zane:
僕はこのトラックに関しては、君とビーフをするつもりだったんだ(笑)。
もー、この曲、短すぎるよ!(笑)。
僕にとってはこのアルバムで一番好きなビートの一つなのに!ちょうど体が温まってきたって時だったのに。
でもこれって考え抜いた上でそうなったの?アルバムに入る為の導入部みたいな事?
Kanye:
いいや、ただ俺がこの長さを気に入っただけさ。
もともとはBlood On Th Leavesが一番目の曲のはずだったんだ。
そうしたらYeezesに批判的な態度を取る奴らの捉え方を変えることが出来るだろうと心では分かってはいたんだけど、でもそういう時期ではなかった。
多くの場合、音楽ってサービス業みたいなものになってしまってるんだ。
でも、俺はもっと音楽に怒りのこもったアプローチをしたかった。
たとえば、ヴァケーションに行ったら人は「ドラッグある?音楽ある?お酒も準備した?」みたいな、音楽ってそういう領域にあるだろ。でも俺は大声で言いたいんだ、「俺の声は俺自身を芸術的に音楽で表現する為だけに圧縮するんだ(compress to express)!」ってね。
実際、俺には、そこ以外の理想はないんだ。だから俺は音楽を3次元に持って行きたいんだ、例えばスターウォーズみたいにR2D2からホログラムが飛び出したりね。俺は人がビックリして飛び上がってしまうような、良くも悪くも人に影響を与えてしまうようなトラックを作りたいんだ。
だから、曲の途中で急に叫んだりする、だってそういう風に感じたんだから。
俺はイージーリスニング的な、イージープログラミング的な音楽を作ろうとしてるんじゃないんだ。
Zane:
じゃあその点は見事にやってのけたと思うよ。
さっき君が言ったように色んな声を使ったり、お決まりのライムフローに頼らなかったりね。
”Yeezus seasons approaching”とか”A monster’s awoken”っていうオープニングラインとか、Dark Fantacyの続編ですよって感じでは決してないよね。
僕はアルバムを聞き出してすぐに動揺しちゃったよ。それから優雅なメロディーの中からいきなり君が現れたり、コラージュみたいだよね。
そして、そういう作品になったのは、君がそうしたかったから。文句ないでしょってことだよね。
Kanye:
そうだよ、人生だってそうだ、車の衝突事故みたいなものさ。
運転していたら、いきなり何処からともなく現れて、それは起こっちまう。
Zane:
どのタイミングで、このアルバムにはそういうアプローチでいこうと思ったの?
こうやっていきなりブレイクが入ったり、違うコードが合流したり、エレクトロニックなパートがあったり、全てが複雑に混ざり合ってるけど、一つにまとまっているような構成。アルバムを通して色んな要素が混在してるような作り。
どういうタイミングでこれらが形になってきたの?
初めから君の頭の中にあった?それともアルバムをまとめる(reduce)過程で出来てきたの?
Kanye:
俺がまとめた(reduce)んじゃないんだけどね、Rick Rubinがまとめたんだ。
あの人はプロデューサーじゃないね、リデューサーだ(笑)。
Zane:
ははは(笑)。
こういった作りっていうのは、いつもは君がやってる事?
違うエレメンツのものをくっつけちゃったり。
Kanye:
それは、その時の俺の情報の処理の仕方だったんだ。
インターネットからのネガティブな情報やポジティブな情報とかね、色々あったからね。
だから、俺はルーブルに行って家具の展覧会にいったり、建築の事について学んだり、服のコラボレートに関する凄い数のミーティングに参加したり、その他にも、あらゆる事をやって進む方向を探ってた。
そういうフラストレーションが積もってたんだ。
だからこれはそういうフラストレーションをぶち壊すような音なんだ。
「黒人が音楽スターとして活躍することを可能にしたのはマイケル・ジャクソンだった」。マイケルよりも上に手が届いたときに、カニエが感じたクリエイターとしての壁。に続く。
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