コミュニティデザイン!匿名コミュニケーションはハプニングと文化を生む空間に繋がる。

sponcered by







annonymous

僕がウェブで発言とかを見るたびに、凄いなぁ、超賢いんだろうなぁと尊敬してやまない人として、nanapiの社長をしているけんすうさん(古川健介さん)という方がいるのですが、その方の対談を読んでいてインターネット上のコミュニケーションの文化や性質的なところに凄く興味が湧いて、ここ数日ずっと考えていたので、とりあえずまとめてみました(対談は以下のリンク先。)

2ちゃんはなぜ1000で落ちるのか? けんすう氏が語る、スマホ時代のサービス設計とコンテクストの重要性

nanapi古川氏「いまのネットはつながり過ぎている」 スマホ時代における”匿名”の重要性とは?

ということで、まずは「匿名コミュニケーション」という空間の性質や文化について考えてみました。

匿名コミュニケーションは危険だとか、オタクだとか、無法地帯だとか、そういうしょーもないのとは違う感じになったと思います!

もしよければ上の対談読んでからどうぞ!

匿名のコミュニケーション文化が行われている場所

はじめに匿名のコミュニケーション文化が成立している場所を考えてみましょう。

まずは「2ちゃんねる」があげられます。「2ちゃんねる」を始めとした掲示板は、長らく匿名コミュニケーション文化の主役だったと思います。

次に「ニコニコ動画・ニコニコ生放送のコメント欄」もあげられるでしょう。(※投稿者側、放送者側は半匿名コミュニケーションの文化に則っているので注意が必要です。)

それからスマートフォンに目を移すと、話題のアプリとしてはnanapiの出している「アンサー」と、匿名通話アプリの「斉藤さん」もあげられると思います。またツイッターにおける「フォロワー数が少ない匿名アカウント」も匿名コミュニケーション文化に沿った行動をする気がします。(※ツイッターは全体としては半匿名~実名コミュニケーションの文化に近いのかなと思います。)

匿名コミュニケーションに関する各性質

A. 匿名コミュニケーションの原則

(1) 人間関係は蓄積されない。

(2) 全く知らない相手と、一瞬でコミュニケーションが始まる。

(3) いつでも逃げられる。

(4) 失うものがない。

B. 匿名コミュニケーションの文化

(1) ネタ・コンテンツありきのコミュニケーション文化。

(2) ハプニングや先の分からない展開をリアルタイムで楽しむ文化。

C. 匿名コミュニケーションが行われる場所の性質

(1) 短期的な文脈は定期的にリフレッシュされて断絶する。

(2) コミュニケーションのパターン化が進み、長期的な面では”お約束”が出来上がる。

D. 匿名コミュニケーションが満たす人間の欲求

(1) 突発的・短期的な承認欲求を満たす。

(2) 何か無ぇかなー!欲を満たす。

それでは順番に解説していきたいと思います。

匿名コミュニケーションのポイントは一期一会性

まずはAから説明します。

匿名コミュニケーションのポイントは、当たり前ですが自分が誰なのかが相手には全く分からないということです。

誰か分からないということは、原則として(LINE教えて~とかしない限り)一度別れれば次に会うことは無いので、人間関係は蓄積されないということになります。これが(1)です。

次に、人間関係が蓄積されないということは、コミュニケーションの始まりは常に全く知らない相手と突然始まるということになります。これが(2)です。

それから、誰か分からないということは、いつでもコミュニケーションから逃げられる(追いかけられない)ということになります。これが(3)です。

最後にこれらを総合して言えば、失うものがないコミュニケーションということになります。これが(4)です。

匿名コミュニケーションの文化はハプニング型

次にBを説明します。

こうしたAで解説した性質のコミュニケーションでは、人ありきでコミュニケーションを開始することが出来ません。人間関係が蓄積されず、突然に会話が始まるのですから、「この人はジャズが好きな人だから~」も「この人、前にフェイスブックにカリフォルニア行った写真アップしてたな」もありません。つまり、コミュニケーションの始まりに置いては、基本的には触媒となるものが用意されなければならないのです。

「2ちゃんねる」を始めとする掲示板のスレッドには、必ず>>1に何について話すのかが書かれています。ニュースが貼られたりすることもあります。それを触媒として、意見を述べたり、大喜利的に面白いことを言ったりしながらコミュニケーションが展開します。

「ニコニコ動画」では、動画に対してコメントが湧いてコミュニケーションの場となるわけです。それぞれの動画が2ちゃんねるのスレッドのような形と言えばイメージしやすいかもしれません。「アンサー」も基本はQ&Aアプリということなので質問(内容が質問になっているかはともかく)という会話のネタがあります。

初対面でネタがないと会話が成り立たないのは当然です。(圧倒的コミュニケーション能力を以てすれば可能なのでしょうか。)

「斉藤さん」は完全匿名でありながら、話すネタの設定無しに会話が始まる点で少し特殊です。斉藤さんを使ってみたのですが、この点の影響か、やはり会話の成立率は低い気がします。「○○について話そう」のようなお題ありきでユーザー二人を繋ぐと、つまんなくなる気もしますが、会話の成立率に限って言えば上がる気がします。

逆に人ありきではなく、ネタ・コンテンツありきで会話が始まるということは、ネタ・コンテンツさえ用意できれば人間的な選り好みの要素なく誰と誰でも会話を始められるわけです(あいつウザイから近寄りたくない!とか、オタクだから話したくない!とか無いわけです。誰と喋ってるのかも分からないのです!)。

また、ネタ・コンテンツありきということは、会話の内容が分かりやすく、どこの会話に加わればいいのかも分かりやすい、つまり会話に参加しやすいということに繋がります。これがBの(1)です。

また、いつでも逃げられるし、失うものがないということは、守りよりも攻めのコミュニケーションに繋がります。言い換えるならば、「どう思われるか < ネタ性・面白さ」ということです。ですから、コミュニケーションは予想外の展開に発展しやすく、その味を知った参加者や閲覧者はハプニングや思わぬ展開を求めます。これをリアルタイムに楽しむというのが匿名コミュニケーションの中毒性のひとつなのではないかと思います。匿名コミュニケーションの方がリアルタイムでずっと画面に齧り付くような中毒性が強く出る気がします。僕自身、TLに流れてきて何の気なしに開いた生放送をボケーっと眺めたりして、後で時間使ったのを超後悔したりします。これがBの(2)です。

そういった意味では「斉藤さん」はBの(1)を犠牲にしている代わりにBの(2)を研ぎ澄ましているのかもしれません。(というか「斉藤さん」はだいぶ特殊でこの中で語れないのかもしれません。)

匿名コミュニケーション空間では定期的なリフレッシュが行われ、それを横断する”お約束”が出来上がる

Cの(1)に移ります。

まず、こうしたコミュニケーション空間では、定期的にネタ・コンテンツがリフレッシュされる必要性があります。

これはBの(1)の「会話が分かりやすいから参加しやすい」と対になります。要するに最初に設定されたネタ・コンテンツからあまりに会話が盛り上がりすぎて方向が変わっていくと、新しく来た人が会話に参入できないという問題が生じるのです。

ですから、2ちゃんねるは1000を超えるとスレッドが立て直されますし、一般的に掲示板はレス数に限界があったり、盛り上がっているスレッドは移り変わっていきます。ニコニコ動画もずっと一つの動画が盛り上がっていることはありません。時間、日毎のランキング等で常にメインのネタ・コンテンツのリフレッシュを図っています。

こうして短期的な文脈・会話は定期的にリフレッシュされて断絶します。そして新しいステージで、また「よーいどん!」でコミュニケーションが始まるのです。この繰り返しが匿名コミュニケーションの行われる場の性質です。(そう考えるとダラーっと繋がっているツイッターとはだいぶ違うことに気付きます!)

さて、このように短期的な会話の流れや文脈が断絶されるようになると、逆に長期的には”お約束”が出来上がるようになります。これは例えば「2ちゃんねる」において、しょうもない質問をする人間が来たときの「ggrks(ググれカス)」等があげられると思います。ニコニコ動画で時報画面に飛ばされて、ユーザーが「時報www」とかコメントするのもそうかもしれません(そう考えるとニコニコ動画って凄くコミュニティデザインが上手な気がします)。

1回1回の会話の流れは放送毎、つまり30分で断絶するバラエティ番組で、回をまたいでお決まりのボケ・ツッコミパターンが出来上がるように、突発的で断絶するコミュニケーションを大きな流れの中では継続させていくために、こうした形式面での”お約束”が出来上がるのではないかというのが僕の仮説です。

短期的な文脈・会話が断ち切られることによって、長期的にはお約束やコンテキスト、文化が出来上がるというのは考えてみるととても面白い気がします。『ITビジネスの原理』という本で尾原和啓さんがハイコンテキストの重要性を語られていたのですが、こういうハイコンテキストや文化のある匿名ネット空間をデザインするのが凄く上手だったのが、ひろゆき氏なのかもしれません(総じてモラル感のない空間に発展していますが笑)。

この本、前も紹介した気がするのですがとても面白いです。

短期的な承認欲求は迅速なレスポンスで満たされる

次にこうしたコミュニケーション文化が人間のどういう欲求を満たすかについて考えたいと思います。

まず一つ目はインターネットといえば承認欲求、承認欲求といえばインターネットということで、承認欲求なのですが、匿名コミュニケーションにおいては人間関係が蓄積しないので、「自分という存在が世間に認められる」という形での承認欲求は満たされません。匿名コミュニケーションにおいては、「自分の発信に対するスピーディーな反応」という形で承認欲求が満たされます。

たとえば掲示板に何か書き込んだら画面の前に座って定期的に更新を押して反応を待つ人とか居るんじゃないかと思います。アンサーも最初の頃は特にレスの速さが話題になっていました。

ニコニコ生放送で「コメントに色を付けたりするためには課金してね」というような課金が成り立つのも、「自分の発信に対する瞬時の反応が欲しい」という承認欲求が満たされる確率が上がるからだと思います。フェイスブックで課金したら赤文字の太字で書けるとか言われても多分誰もやらないですよね。ニコニコ生放送でよく放送主がコメントを順番に読んで適当なツッコミを入れてるだけで成り立っていたりするのも、コメントに対するスピーディーな反応という承認欲求が満たされているからだと思います。

ただ、こうした自分の発信に対する即レスという短期的な承認欲求だけでは、いずれ虚しさが襲ってくるようになります。それを解決したのが半匿名、それから実名のコミュニケーションであり、SNSなのではないかと僕は考えています。半匿名コミュニケーションについてはまた後日。

次に「何か無ぇかなー!」欲についてです。これはBの(2)の「予想外のハプニングを楽しむ文化」がそのまま欲求化したものです。「暇ー!何か面白いこと起こらないかなー!」と思ったときにフェイスブックを眺めていても何も起こりませんよね。でもニコニコ生放送なんかを眺めていたら何か起こりそうです。匿名コミュニケーションはこういう風に暇つぶし性能は高いんだと思います。

以上の2つの欲求を匿名コミュニケーションは満たしているのではないかなと思います。

「ユーザーをリアルタイムで拘束して熱量ある空間にしたい!」、「短いスパンでぶちぶち切れるコミュニケーションの連続ながらも、全体では文化がある空間にしたい!」と考えてサービスを作るときは匿名にするといいのかもしれませんね。

 

以上匿名コミュニケーションについて考えてみました。

時間があれば、半匿名コミュニケーションについて考えてみたいと思います。

sponcered by







コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

ABOUTこの記事をかいた人

ラップをしています!アルバム『アウフヘーベン』、EP『Lost Tapes vol.1』、『Lost Tapes col.2』を発売中!