
オランダのスタートアップ、BlendleがThe New York Timesを運営するThe New York Times Companyから380万ドル(約4億円)を調達したそうです。
BlendleはジャーナリズムのiTunesを目指す
Blendleは、iTunesがアルバム単位ではなく曲をデジタルでバラ売りしたのと同じように、オンライン上の記事をバラ売りするプラットフォームとなっています。
1記事あたり0.25ユーロなどの値段が付けられていて、読みたい場合は、記事を個別に購入して読むという仕組みになっています。
Blendleに将来性は無い?
少し検索してみたところ、Blendleの可能性に懐疑的な記事も上がっています。
たとえば、こちらのThe New York Times and Axel Springer are wrong about Blendle(『The New York TimesとAxel SpringerはBlendleについて間違った判断をしている』)という記事。
この記事ではBlendleの先行きが危ういと考えられる4つの理由が述べられています。
1つ目は、オンライン上の記事という世界は、とっくに無料化されてしまった世界であるということ。既に無料で質が高いコンテンツがあるときに、有料で記事を買うなんて在り得ないというわけです。
2つ目は、ジャーナリズムというのはそもそもバラ売りに向いていないのだという意見です。雑誌や新聞には、そもそも2種類の記事があると述べられています。ひとつはコストに見合わないけれど社会的意義のあるコンテンツ、もうひとつはコストが安く多くの需要があるけれど、しょうもないコンテンツです。既存の雑誌や新聞は、これらのコンテンツを抱き合わせることによって、社会的意義のあるコンテンツを生み出すことが出来ているというのです。僕は、この点には少し懐疑的で、記事はバラ売りしても単価×需要で適切なところに落ち着くと考えています。たとえば貴重なインタビュー記事などは多少高くても読まれますし、タイトルで釣ったような記事でも興味が沸けば5円や10円であれば支払って見てみるかもしれません。よほどコストが掛かり、かつ、需要が無いものはさすがに無理なのかもしれませんが、50,000円のコストで作った記事でも、500円で100人に読まれれば元が取れることを考えると、ある程度のコストまではバラ売りでも成立すると考えています。逆にあまりに不採算な記事は、このプラットフォーム上では生まれ得ないという点については、その通りなのかなと。
3つ目はあまり的を得ていない批判なので割愛します。
4つ目は広告を入れることが出来ない点です。メディアと広告というのは切っても切り離せないものであり、記事を有料で売る=広告を捨てるということは、メディアとして大切な収入源や骨格を捨てているようなものだというわけです。僕はこちらも少し違うかなと考えていて、Blendleのトップページに人が集まるようになれば充分に広告モデルも成り立つと思っています。広告というのは要するに人を集めて流す過程で対価を貰うビジネスであり、たくさんのユーザーがトップページに来て、そこから記事に流れているという導線さえ出来ていれば、広告はいかようにも入れることが出来るはずです。
そうなってくると、やはり1つ目がポイントになってくるはずです。
つまり、他で無料で読めるような記事であれば買われないのではという点です。
Blendleの将来性はどこにあるか
ということで、Blendleにとって良くない点をあげた記事を紹介したので、僕が考えるBlendleの可能性に触れてみたいと思います。
優秀な個人ライターの収益化プラットフォームになり得る
世の中には優れたライティングの技術を持つ人がたくさんいます。
先日も芥川賞作家の柳美里さんの未払い問題や困窮ぶりが話題になっていました。
火を見るよりも明らかですが、文章を書くのが上手いだけではイケダハヤトのように独立するのは難しいのです。
良い記事を書けるのに、メディアを作れなかったり、マネタイズの方法が分からなかったりで、ライターとして活躍できない人はまだまだ世界にたくさんいるでしょう。
Blendleがプラットフォームとして機能し、優秀なライターが記事を寄せるようになり、そこに上手にトップページから顧客を流すことが出来れば、優秀なライターを支え、世の中に価値のあるコンテンツを生み出すことに大きく貢献するはずです。
プラットフォームとして成長すれば、iTunesどころでなく決済情報を集めるようになる
音楽を買う人と、記事をネットで読む人を比べると、明らかに記事をネットで読む人の方が多いはずです。
また、単価も数十円程度であれば、気軽にクレジットカードが切られることが予想できます。
もしBlendleが記事売買のプラットフォームとして成立すれば、そこには膨大な量のクレジットカード情報が集まるでしょう。
Blendleはそのクレジットカードの情報を元に、決済ビジネスなどに乗り出すことも可能です。
ということで
まずは良質なコンテンツと、それを買いたいユーザーを集められるかが勝負なBlendle。
これからも目が離せません。
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