「アーキテクチャ」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべますか?
英語が得意な方は「建造物」、あるいは立派なビルや建物を思い浮かべるかもしれません。
僕は最初にこのタイトルを見たとき、何だか工学部っぽいなというイメージを抱きました。
実際のところ、アーキテクチャとは設計や構造、建築学といった意味なので、工学部っぽい単語なのです。
しかし、この本は決してそういった理系っぽい内容ではありません。むしろド文系な内容なのです。
ウェブが好き、もしくは社会や環境デザイン、メディアといったものが好きな方なら面白く読めること間違いなしなので、紹介してみたいと思います。
レッシグが論じたアーキテクチャ論
さて、アーキテクチャという概念はアメリカの憲法学者であるレッシグが『CODE』という本の中で論じたものらしいです。
『CODE』自体が2001年に出版されているので、比較的新しい概念になります。
それでは、実際にどういうものなのかということで、例をひとつ紹介したいと思います。
たとえば、とある飲食店が客の回転率を上げようとしているとします。
その方法はいくつか考えられると思います。
(1) 食べ終わった客に、混んでいるので早めに退出してもらうようお願いする
(2) 店に居た時間に応じてお金を払ってもらう料金体系にする
さて、これらの方法の場合、ポイントは外部からの働きかけによって、最終的には本人が判断して店を出るということです。
逆に言ってしまえば、本人は居座ろうと思えばいくらでも居座れるのです。
さて、アーキテクチャの考え方は少し違います。
本書ではファーストフード店の回転率向上策が紹介されています。
たとえば社会学者の宮台真司氏は、レッシグの議論を受けて、ファーストフード店の椅子の堅さ・BGMの大きさ・冷房の強さといった例を挙げています。椅子をふかふかのソファにするのではなく、堅い材質のものにしておけば、なんとなく居心地が悪いので、お客さんは長居しなくなります。さらにお店が混雑してきたら、BGMの音量を上げ、冷房を強めることで、お客さんが気付かない程度に店内の不快指数を引き上げ、ひいては店の回転率を向上することができる、というわけです。お客さんの側は、「実はそういう操作が裏で行われているんだよ」といわれなければ、その事実に気づくのは難しいでしょう。
つまり、アーキテクチャは本人の判断や意識とは関係なく、仕組みの設計によって人をコントロールするという概念なのです。
レッシグはアーキテクチャの例としてコピーコントロールCD等をあげ、こうした著作権保護のためのアーキテクチャが表現・創造の自由を阻害するものだと批判し、クリエイティブ・コモンズの活動に着手したのです。
Googleはどのように仕組みを設計したか
さて、それではアーキテクチャとウェブサービスはどのように関係があるのでしょうか。
まずはGoogleを考えてみましょう。
そもそもインターネットでは、HTTPという仕組みによって、リンクを貼ることでファイルの場所を示すことができました。
つまり、おもしろいサイトや有用なサイトにリンクを貼ることで、ファイル同士・サイト同士が繋がっていたのです。
ウェブサーフィンは、今と違い、おもしろいサイトを見つけたらお気に入りに登録して、そのサイトのリンク集からまた次のおもしろそうなページを見つけてという具合になっていたのですね。
そして、Googleが検索結果を表示する際に利用したのが、この「有意義なサイトへのリンクを貼る」という人々の習性でした。
Googleはリンクがたくさん貼られたサイトほど有意義なサイトだと判別するプログラムを構築することで、単語を入れて検索するだけで有意義なサイトが上から順番に並ぶ検索エンジンを実現したのです。
つまり、インターネットユーザーはみんな本人の判断や意識とは関係なく、Googleの検索結果向上のために働いているような状態を構築したと言えます。
その他にもたくさんのウェブサービスがどのようなアーキテクチャをしていたかを解説
様々なブログサービス、2ちゃんねる、ミクシィ、Facebook、ナップスター、ウィニー、ツイッター、ニコニコ動画、ウェブコンテンツ(初音ミク、ケータイ小説など)と、あらゆるものをアーキテクチャ論に基づいて解説してあり、圧巻の無いようです。
ウェブサービスの教科書みたいな本なので、好きな方はぜひ。
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