時代の変遷を理解する
消費させるから、消費されるへ。パワーバランスがひっくり返るとき。
従来、消費者には力がありませんでした。
消費者の力とは、つまり選択肢の広さです。選択肢が多様であればあるほど、消費者は好きな者を、自分の思い通りに消費することが出来ます。
消費者に選択肢という力が備わったとき、生産者は、消費者に選んでもらうべく、より真摯にならなければいけないのです。
そして選択肢を何よりも広げたのがインターネットとスマートフォンです。インターネットとスマートフォンは、消費者のあらゆる情報へのアクセスを圧倒的に広げました。今や何を消費するかは消費者が選ぶことができるようになったのです。
ほかに時間をつぶす充てなくゴールデンの番組を垂れ流して見る必要も無くなりました。テレビを見るにしても、高機能なHDDによって、広告を飛ばして、好きな時間に好きな部分だけを見ることが可能になっています。
その結果、ゴールデンのCM枠を支配してのマス広告の力は弱まり、SONYやシャープ、パナソニックといったマス広告の常連も業績を落としているのです。
消費者に編成権が移ると広告の力は弱まる
こうなると、人を動かすための方法も変わってきます。
選択肢に乏しい人がたくさんいたときには、そのたくさんの人たちにひたすら知ってもらい、数少ない選択肢に入れてもらえば良かったのです。しかし、選択肢が豊富な人間がたくさんいるとき、たくさんの人たちの豊富な選択肢の中に入ったところで、結局のところ選択されないのです。
田畑さんはこのことを、演説から会話へという言葉で説明されています。
そして本書では、私たちは人間を動かすものは何かという本質的な部分に立ち返って考えるべきだと指摘されています。
なぜ人は動くのか
そして、その本質的な部分についての対談がなかなか面白いのです。
プリン4000個のご発注がツイッターでの呼びかけで即日完売した事例、Facebookのイベント招待ミスで見知らぬ若者が数千人襲来してしまった事例、一秒間に14万3199ツイートを生むバルス祭りの事例、ランニング人口が1000万人を超えている東京マラソンブーム。
こうした様々な事例から、1000人を動かす、10000人を動かすといった具合で、何がポイントになりそうかを田畑さんと本田さんが対談していきます。そして、10万人が動くポイントは共犯意識だといった具合に。
対談ですし、人を動かすという試みは再現性のあるものではないので、検証された論文のようなものではなく、あくまでもアイデアベースですが、事例だけでもなかなか面白いです。
ということで
何か画期的な手法が書かれているわけでもありませんし、繰り返しになりますが再現性のある分野ではないので、この本を読めば人を簡単に動かせるようになるというものではありません。
一方で、とにかく多くの人の目に入れる、知ってもらう、という旧来の広告のあり方に疑問がある人は、読んでみると新しい視点につながったり、良い刺激になるかもしれません!
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