昨年のアルバム以降も大活躍で、とにかく凄すぎて逆に何が凄いのか分からなくなりつつあるケンドリック・ラマーの新曲のリリースから一週間が経とうとしています。
今回の作品はそのフロウも凄いのですが、歌詞も次のアルバムを待つ上で、いろいろと想像できて楽しみな内容です。
前作の『Good Kid M.a.a.D City』は非常にディープでパーソナル、つまりリアルなストーリーテリング物だったわけですが、”i”を聴くと今回はより抽象的・普遍的な方向に向かっていくことが予想出来ます。
解説の部分でも触れていますが、前作の”Real”で子どもたちに教訓を残しなさいという母親のメッセージがあり、そこを引き継いで今作はより教訓的になっているのかなという感じです。
Controlの際も早々にアンサーを出したりと、何かとシーンに挑発的なケンドリックに対して挑発的なルーペ・フィアスコという似たような境遇のラッパー(犯罪の多い街で育ち、犯罪を嫌うコンシャスなラッパー)は前作でヒップホップシーンやギャングの抗争等の問題点に対して一つの答えを出しましたが、今作ではケンドリックがどのような答えを出してくるのか(”i”を聴くに、おそらくは”自分を愛する”ことに近い辺りになると思うのですが)、非常に楽しみにさせてくれます。
リリックの解説
イントロ
We got a young brother to stand for something!
We got a young brother that believe in the all of us!
若い兄弟が言いたいことがあるんだ!
俺らみんなの可能性を信じてる若い兄弟だぜ!
Brother Kendrick Lamar! He’s not a rapper, he’s a writer, he’s an author!
ケンドリック・ラマーの登場!彼はラッパーじゃない ライター そう作家なんだ!
And if you read between the lines, we’ll learn how to love one another!
But you can’t do that Right on
注意して聞けばお互いに愛し合う方法が分かるはずだ!
でも難しいことだぜ
I said, you can’t do that – without loving yourself first
そう!まず自分を愛さなきゃいけないんだ
【解説】
前作『Good kid Maad City』では自身の体験に基づいて、同調圧力と戦うコンプトンの善良な少年を描いたケンドリックですが、今回はラッパーから作家に、歌詞や教訓を前作のパーソナルなものから、より普遍的なものにしていこうという姿勢が感じられます。
1バース目
I done been through a whole lot
俺はいろんなことを切り抜けてきた
Trial, tribulations, but I know God
試練と苦難 でも俺は神を知っている
Satan wanna put me in a bow-tie
悪は俺に蝶ネクタイをつけて仕えてほしいんだ
【解説】
蝶ネクタイを付けさせたいということですので、執事として仕えさせたいと解釈できます
Praying that the holy water don’t go dry, yeah yeah
聖なる水が枯れないように祈らせるのさ
As I look around me / So many motherfuckers wanna down me
俺の周りを見ると / 多くの奴らが俺を餌食にしたがっている
But ain’t no nigga never drown me
でもそんなの不可能
【解説】
ここの2つのラインは直訳すると「多くのマザファッカー達が俺を餌食にしたがっている」、「どんなニガも俺を溺れさせることは出来ない」ということになります。
こちらのリリックは前作からシングルカットされている”Swimming Pool”を知っていればイメージがしやすくなっています。
「俺が飲めば、お前も飲むんだ」と言った具合にクラブで他の客が飲酒を煽ってくる中でK.Dotの良心と悪心が葛藤するシーンは前作の”同調圧力の中で葛藤する少年”を比喩的に象徴する一つの場面でもありました。
その飲酒を煽ってくる客が言うには「本当の酒の飲み方はプールをアルコールでいっぱいにして飛び込むんだ」(”Swimming Pools”のサビの歌詞)というものだったわけです。
プールいっぱいのアルコールに飛び込むよう煽ってくるという前作を連想させて、「多くの奴らが俺を餌食にしたがっているけど、俺を溺れさせることは出来ない」と言っているのです。
In front of a dirty double-mirror they found me
きたない刑務所で俺を見つけたんだ
サビ
And I love myself
(The world is a ghetto with guns and picket signs)
俺は自分を愛してる
(世界は銃と抗議のプラカードがあふれるスラム街)
I love myself
(But it can do what it want whenever it wants and I don’t mind)
俺は自分を愛してる
(でも世の中はやりたいことし放題 気にしないけど)
I love myself
(He said I gotta get up, life is more than suicide)
俺は自分を愛してる
(彼は言ったんだ 生きなきゃいけないから立ち上がれって)
I love myself
(One day at the time, sun gone shine)
俺は自分を愛してる
(物事が少しずつ良い方向に進むから)
2バース目
Everybody looking at you crazy (Crazy)
みんな君のことクレージーだと思ってる(クレージー)
What you gone do? (What you gone do?)
どうするつもりだ?(どうするつもりだ?)
Lift up your head and keep moving (Keep moving)
頭を上げて進み続けなよ(進み続けなよ)
Or let the paranoia haunt you? (Haunt you)
じゃなきゃパラノイアに囚われるぜ?(囚われるぜ)
Peace to fashion police, I wear my heart
みんなにどう思われようと構わない
On my sleeve let the runway start
俺は自分の気持ちを表現し続ける さあランウェイを歩こう
【解説】
まず二つ上のラインは「ファッションの警察にピース、俺は自分のハートを着るぜ」ということで、自分の心のままにということだと思われます。そして2つ目のラインは、自分の心を着た上で、その袖からランウェイが始まるということです。ありのままの自分の心を表現し続けるということになります。
You know the miserable do love company
みじめな奴らは仲間が大好き
What do you want from me and my scars?
俺とこの傷から何が欲しいんだ?
Everybody lack confidence, everybody lack confidence
みんな自信がない みんな自信がない
How many times our potential was anonymous?
何度俺らの可能性は無視されてきた?
How many times the city making me promises?
何度俺はこの町に約束させられてきた?
So I promise this
だから俺はこれを約束する
3バース目
They wanna say there’s a war outside and a bomb in the street
奴らは言いたいんだ 外の世界は戦争で通りには爆弾があるって
And a gun in the hood and a mob of police
近所は銃と警察だらけで
And a rock on the corner and a line full of fiends
街角はコカインとギャングだらけ
And a bottle full of lean and a model on a scheme, yup
ハイになってる奴らと街を象徴する悪い奴ら そうさ
【解説】
Bottle full of leanはコデインでいっぱいのボトルですね。他のラッパーたちが何を歌っているか、つまり他のラッパーたちは世界をどういうものとして描いているかを叙述しているわけです。
These days of frustration keep y’all on ducking rotation
この不満の時代では警戒しとかないと
I duck these gold faces, post up fee-fi-fo-fum basis
俺は俺を狙ってるギャングを避けるんだ
【解説】
fee-fi-fo-fumとは『ジャックと豆の木』で巨人がジャックを探すときに匂いを嗅ぐ音です。ギャングがケンドリックを探している様子を表しています。
ケンドリックが本当に巨大なものと戦っていることが伺えます。
Dreams of realities peace
平和な現実を夢見て
Blow steam in the face of the beast
悪い奴らから背を向けるんだ
The sky can fall down, the wind can cry now
空が落ちてきて 風は泣き叫ぶ
The strong in me, I still smile
俺には強さがる それにまだ笑顔でいれる
【解説】
コンプトンという犯罪のメッカで育ちながらも、他のラッパーたちが歌うような世界に背を向けて、平和を望む道をケンドリックは歩きます。空は落ちて風は泣き叫ぶような辛い戦いですが、それでもケンドリックは笑っていられるのです。精神的な強さはケンドリック・ラマーの大きな魅力の一つです。
4バース目
Walk my barefeet (Walk my barefeet)
裸足で歩いて(裸足で歩いて)
Down, down valley peak (Down, down valley peak)
深い谷を下っていく(深い谷を下っていく)
I keep my fee-fi-fo-fum (Fee-fi-fo-fum)
俺は情熱を持ち続ける(フィーファイフォーファン)
I keep my heart undone (My heart undone)
俺は心をみんなに開き続ける(心を開く)
5バース目
I went to war last night
昨日の夜 戦争に行った
With an automatic weapon, don’t nobody call a medic
核兵器を持って みんな医者を呼ぶなよ
I’mma do it ‘til I get it right
俺は決着をつけるまで戦い続ける
【解説】
ケンドリックは”Control”で証明して見せたように、一度戦い始めたらやりすぎてしまう性格の持ち主です。それが核兵器を持って戦争に行き、決着を付けるというのです。ラッパーやアーティストとしての戦いだけでなく、前作で始めたギャングの抗争が絶えないコンプトンへの戦いという意味も当然含まれているでしょうから、物凄いアルバムを期待してしまいます。
I went to war last night
昨日の夜 戦争に行った
I’ve been dealing with depression ever since an adolescent
俺は思春期の頃からずっと絶望と戦ってるんだ
Duckin’ every other blessin’, l can never see the message
絶好のチャンスを逃してきた チャンスに気づかないんだ
I can never take the lead, I can never bob and weave
俺はトラブルに巻き込まれるのはごめんだ
For my nigga that be letting ‘em annihilate me
悪いことをするやつなんてお断り
And the sound is moving in a meteor speed
音が流れ星のように早く動いている
From a 100 to a billion lay my body in the street
もし俺が死んだら通りに埋めてくれ
Keep my money in the ceiling let my mama know I’m free
天井にお金を隠してる 母さんに悪とは無縁だって伝えてくれ
Give my story to the children and the lesson they can read
俺の話を子供に教えて 教訓を学んでもらうのさ
【解説】
この部分については奥田翔さんがブログで触れてます。
引用すると、
Kendrickは前作で自分が経験してきたことを語り、少年時代の彼と同じ境遇にいるフッドの子供達に希望を与えました。
もう、メジャーデビュー前とは立ち位置が違うんですね!
自分がラップで成功するだけでなくフッドに還元しようという姿勢が感じられます。
まさに”Real”のスキットでお母さんが言っていた通り!
Tell your story to these black and brown kids in Compton. Let ‘em know you was just like them, but you still rose from that dark place of violence, becoming a positive person. But when you do make it, give back with your words of encouragement, and that’s the best way to give back. To your city…
(あなたのストーリーを、コンプトンの黒人やヒスパニックの子供達に伝えなさい。あなたも彼らと同じだったけど、暴力が蔓延る暗い場所から立ち上がり、ポジティブな人間になったって伝えるのよ。でも、成功したら、励ましの言葉で還元するのを忘れないで。それが、あなたの育った街への一番の恩返しだから)
自分を愛するということも含めて、この曲は前作で最も思想的な曲である”Real”(”Real”から”Compton”の流れは最高すぎるので必聴です)の延長線上で捉えることが出来ます。
And the glory to the feeling of the only unseen
姿が見えない神を称えるんだ
Seen enough, make a motherfucker scream, “I love myself!”
悪い奴らに「自分を愛してる!」って叫ばせるのさ
I lost my head, I must’ve misread what the good book said
俺は動転してた 聖書を読み間違えたに違いない
Oh woes keep me, it’s a jungle inside
ああ悲しみが続く どうかしてるよ
Give myself again ‘til the well runs dry
聖なる井戸の水が枯れるまで自分を犠牲にしていくつもりさ
和訳
(今回、歌詞の和訳はmiori.kさんにお願いしました。)
[イントロ]
ケンドリック・ラマーの登場!彼はラッパーじゃない ライター そう作家なんだ!
注意して聞けばお互いに愛し合う方法が分かるはずだ!でも難しいことだぜ
そう! まず自分を愛さなきゃいけないんだ
さあワールドプレミアの始まりだ!
[VERSE1]
俺はいろんなことを切り抜けてきた
試練と苦難 でも俺は神を知っている
悪は俺にボウタイをつけて仕えてほしいんだ
聖なる水が枯れないように祈らせるのさ
俺の周りを見ると
多くの奴らが俺を餌食にしたがっている
でもそんなの不可能
きたない刑務所で俺を見つけたんだ
[HOOK]
俺は自分を愛してる
(世界は銃と抗議のプラカードがあふれるスラム街)
俺は自分を愛してる
(でも世の中はやりたいことし放題 気にしないけど)
俺は自分を愛してる
(彼は言ったんだ 生きなきゃいけないから立ち上がれって)
俺は自分を愛してる
(物事が少しずつ良い方向に進むから)
[VERSE2]
みんな君のことクレージーだと思ってる(クレージー)
どうするつもりだ?(どうするつもりだ?)
頭を上げて進み続けなよ(進み続けなよ)
じゃなきゃパラノイアに囚われるぜ?(囚われるぜ)
みんなにどう思われようと構わない
俺は自分の気持ちを表現し続ける さあランウェイを歩こう
みじめな奴らは仲間が大好き
俺とこの傷から何が欲しいんだ?
みんな自信がない みんな自信がない
何度俺らの可能性は無視されてきた?
何度俺はこの町に約束させられてきた?
だから俺はこれを約束する
[HOOK]
俺は自分を愛してる
(世界は銃と抗議のプラカードがあふれるスラム街)
俺は自分を愛してる
(でも世の中はやりたいことし放題 気にしないけど)
俺は自分を愛してる
(彼は言ったんだ 生きなきゃいけないから立ち上がれって)
俺は自分を愛してる
(物事が少しずつ良い方向に進むから)
[VERSE2]
奴らは言いたいんだ 外の世界は戦争で通りには爆弾があるって
近所は銃と警察だらけで
街角はコカインとギャングだらけ
ハイになってる奴らと街を象徴する悪い奴ら そうさ
この不満の時代では警戒しとかないと
俺は俺を狙ってるギャングを避けるんだ
平和な現実を夢見て
悪い奴らから背を向けるんだ
空が落ちてきて 風は泣き叫ぶ
俺には強さがる それにまだ笑顔でいれる
[HOOK]
俺は自分を愛してる
(世界は銃と抗議のプラカードがあふれるスラム街)
俺は自分を愛してる
(でも世の中はやりたいことし放題 気にしないけど)
俺は自分を愛してる
(彼は言ったんだ 生きなきゃいけないから立ち上がれって)
俺は自分を愛してる
(物事が少しずつ良い方向に進むから)
[VERSE4]
裸足で歩いて(裸足で歩いて)
深い谷を下っていく(深い谷を下っていく)
俺は情熱を持ち続ける(フィーファイフォーファン)
俺は心をみんなに開き続ける(心を開く)
[HOOK]
俺は自分を愛してる
(世界は銃と抗議のプラカードがあふれるスラム街)
俺は自分を愛してる
(でも世の中はやりたいことし放題 気にしないけど)
俺は自分を愛してる
(彼は言ったんだ 生きなきゃいけないから立ち上がれって)
俺は自分を愛してる
(物事が少しずつ良い方向に進むから)
[VERSE5]
昨日の夜 戦争に行った
核兵器を持って みんな医者を呼ぶなよ
俺は決着をつけるまで戦い続ける
昨日の夜 戦争に行った
俺は思春期の頃からずっと絶望と戦ってるんだ
絶好のチャンスを逃してきた チャンスに気づかないんだ
俺はトラブルに巻き込まれるのはごめんだ
悪いことをするやつなんてお断り
音が流れ星のように早く動いている
もし俺が死んだら通りに埋めてくれ
天井にお金を隠してる 母さんに悪とは無縁だって伝えてくれ
俺の話を子供に教えて 教訓を学んでもらうのさ
姿が見えない神を称えるんだ
悪い奴らに「自分を愛してる!」って叫ばせるのさ
俺は動転してた 聖書を読み間違えたに違いない
ああ悲しみが続く どうかしてるよ
聖なる井戸の水が枯れるまで自分を犠牲にしていくつもりさ
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