政府の預金封鎖や財産没収と資産防衛の方法

金融ファイナンス

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*マクロ経済の考察は「Mercury’s」に移行しました

「政府が国民の資産を没収する」と聞くと、絶対王政のような歴史上の話、もしくは先進国ではない独裁国家における話だと思うでしょう。しかし、政府が国民の資産を没収するということは、日本やアメリカのような十分に成熟した先進国において過去に何度も起きています

written by @raq_reezy

アメリカにおける財産没収の事例:金(ゴールド)保有の禁止

自由の国アメリカにおける国民財産の没収は、実に40年ほどの期間に渡って行われました。国民財産の没収が始まったのは1933年4月5日です。この日、フランクリン・ルーズヴェルト大統領は国民が金(ゴールド)を保有することを禁止する大統領令に署名しました。

当時の世界は金本位制なので、世界各国が発行する通貨はゴールドを担保としていました。お金としてのゴールドがあり、その引換券としての米ドルがある、そんな世界をイメージしてください。ルーズヴェルト大統領は、引換券としてのドルを持つことは許可するけれど、ゴールドそのものを持つことは許さないという大統領令に署名したわけです。こっそりとゴールドを隠し持っていたら刑事罰です。

結果、アメリカ政府は全国民からゴールドを徴収して、代わりに、その引換券である米ドルを渡すことに成功しました。引換券の米ドルといっても、アメリカ国民はゴールドの保有を禁止されているので、実際に引き換えることはできません。誤解を恐れずに言ってしまえば、全国民の財産の没収に成功したのです。こうして没収したゴールドが第二次世界大戦や東西冷戦の戦費、あるいは1970年代まで拡充されていった福祉政策に使われたといえるでしょう。

さて、国民から没収したゴールドを勝手に使ったわけですから、引換券と引き換えるだけのゴールドはなくなります。先日、仮想通貨取引所のFTXが顧客から預かった資産を勝手に使い込んでいたことが判明して破綻しましたが、これと全く同じです。1971年には「米ドルはゴールドの引換券と言ってきたけれど、もうゴールドがないので、米ドルとゴールドの交換は停止します」と発表します。これがニクソン・ショックです。

ニクソン・ショックによって米ドルはゴールドと交換できない紙くずとなりました。紙くずを持っていても仕方がないので、人々は物に変えようとして、物価が上がります。これが1970年代の狂乱のインフレーションです。

アメリカのインフレ率(1970年代)

アメリカのインフレ率(1970年代)

インフレの測定はいろんな方法がありますが、こちらのグラフでは1971年以降にインフレ率が急上昇していることがわかると思います。平均して年率8%程度のインフレが10年は続いているので、この10年で米ドルの価値はざっくりと半分以下になっています。

強制的にゴールドを拠出させて引換券である米ドルを渡しておき、その交換を停止する。この政府の行動に「国民財産の没収」以外の名前をつけるのは難しいでしょう。

日本における財産没収の事例:預金封鎖と財産税

日本で国民財産の没収が行われたのは1946年のことです。

太平洋戦争に敗北した直後の日本では、生産施設も破壊されており、生産年齢人口も戦争によって失われていますから、物やサービスの供給不足に陥り、ハイパーインフレーションを起こしていました。年率50%以上にも達したインフレを抑えるために、政府は国民の財産を没収することを決めます。財産を没収すれば、お金を使いたくても使えないので、需要側が強制的に押さえつけられます。そうすることで、需要と供給を強制的にバランスさせてハイパーインフレを抑えるという手段を取ったわけです。

具体的には、まず預金封鎖といって、銀行から預金を引き出せないようにしました。続いて、新円切り替えといって、古い円を使えなくします。最後に、1人あたり毎月引き出せる新円の量を制限します。このときは世帯あたり300円、1人あたり100円に制限されました。これは現在で12万円ほどに該当します。国民は預金を全額没収されて、毎月12万円以内で引き出せる預金とその月の給与のみで生活することを強いられました。

その他にも、財産税が課税されて、保有している土地なども、それに応じた財産税を支払う必要があるということで、多くの資産が没収されました。

資産防衛の方法

ビットコイン(暗号通貨)

まずひとつめにビットコインがあげられます。ビットコインは秘密鍵によって所有を証明できる資産です。

秘密鍵は紙にメモしておけば良いので、マイナンバーで把握されて没収されることもなければ、ゴールドの現物のように嵩張ることもありません。仮想通貨取引所に置いておくと、マイナンバーと紐づいて、政府の意志ひとつで没収されるため、資産防衛という意味ではペーパーウォレットで保有する必要があります。

仮想通貨取引所からペーパーウォレットに送金しておくと、そこにビットコインがあるということは送金履歴から政府にバレてしまいますが「秘密鍵を忘れてしまって、もう取り出せません」と言えば、それ以上の追及はできないため、比較的安全に保管できるでしょう。とはいえ、それを送金した時点で「秘密鍵を知っている」ということがバレてしまうので、資産防衛はしやすいけれど、その後、国内で自由に支払いに使うのはやや難しいかもしれません。

キャッシュフローを生む資産のうち流動性が低いもの

ビットコインよりも安心できるのは、キャッシュフローを生む資産のうち流動性が低いものです。

流動性が高いもの(有価証券や不動産)は、市場価格がつくため、財産としてその金額が把握されて、財産税によって資産を没収されます。例えば、1億円の株式や不動産を持っていれば、税率50%といわれると5,000万円を没収されてしまいます。

でも、流動性が低いものになると、市場価格がつかないため、その財産価値を政府が把握するのは困難です。例えば、未上場企業の株式、Spotifyで聞かれるたびに収入が入ってくる曲の原盤権の価値、Amazonで販売されている電子書籍の権利、もしくは働くことで収益を生み出せるスキルやノウハウ。こういったものは値段がつけられないため、「1,000万円分の価値があるので、財産税で半分を支払ってください」とは言いにくいものであり、財産の没収を比較的回避しやすいでしょう。

インフレが国民資産の没収に繋がる

さて、話は戻りますが、先ほどのアメリカや日本の事例を見ていただくと、国民資産の没収は基本的にインフレを伴って発生している様子が分かります。

今の日本において、デフレである限りは、日銀が国債を買ってファイナンスするということが既に行われているので、この延長でなんとかなるでしょう。政府は国債を発行して日銀に買ってもらい、そのお金で好き勝手にすることができます。問題はインフレが起きたときです。インフレが起きると、財政ファイナンスはさらなるインフレに繋がるので、限界が来ます。

国家政府の債務膨張というのは、基本的には不可逆ですから、国民資産の没収は「起きるかどうか」ではなく「いつ起きるか」の問題であり、一定のサイクルで発生するものです。ただし、その頻度は70年に一度といったように稀ですから「政府が国民の資産を没収するなんて歴史上の話だ」と忘れた頃にやってくるものだといえるでしょう。

直近の世界的なインフレは落ち着く傾向を見せているため、一旦はこうしたリスクは遠のいたと考えてよいでしょう。しかし、次にアメリカが不景気に陥った場合に金融緩和に戻れば、世界的なインフレが再燃する懸念は残っています。

金融ファイナンス

米国のインフレと金利上昇は一段落して横ばいに向かう

2022年11月25日

*マクロ経済の考察は「Mercury’s」に移行しました

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