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はじめに
ボーカルのミックスをするにあたって、ディエッサーについて詳しく知りたい方へ。
この記事では、以下の内容を説明しています。
この記事の内容
- そもそもディエッサーとは
- ディエッサーのおすすめの使い方は?
ディエッサーは、地味ですが、ボーカルの仕上がりにわりと影響があるので、ぜひ使い方を覚えてしまいましょう。
ディエッサーとは
ディエッサーは、「サ行」の発音時などに出やすい歯擦音(しさつおん)を軽減してくれるプラグインです。
歯擦音とは、その名の通り、歯に空気が擦れるときに出る音で、「シュッ」とか「シッ」という音です。
「サ行」独特の迫力や気持ちよさを表現する上で歯擦音は必要不可欠な要素ですが、あまりに大きいとリスナーが「うるさい」、「耳が痛い」と感じてしまうこともあります。そのため、ディエッサーを用いて、歯擦音を適切なボリュームまでカットしてあげることが重要です。
また、歯擦音は超高音域(6KHz〜)に存在しているので、イコライザーで超高音域を持ち上げたときに、特に悪目立ちしやすいです。このようなときにも、ディエッサーを併用して歯擦音を抑えてあげることで、バランスの良いボーカルミックスを実現できます。
ディエッサーの仕組みとパラメーター
ディエッサーは、「超高音域の音量が閾値を超えた場合に、超高音域の音量を下げる」という仕組みで動いています。
そのため、ディエッサーでは、ざっくりと以下の4種類のパラメーターを調整することになります。
以下、それぞれ詳しく説明していきます。
Threshold(スレッショルド)
スレッショルドは「ディエッサーが作動する音量の閾値」を表します。
つまり、一定の音域において、音量がスレッショルドで設定した値以上になれば、ディエッサーが作動してその音域の音量を下げ、歯擦音を軽減します。
Max Reduction(リダクション)
リダクションは「どのくらい音量を下げるか」を表します。
リダクションが大きいほどディエッサーの効き具合は強くなり、歯擦音はしっかりと軽減されます。リダクションが小さいほど、ディエッサーの効き具合は弱くなり、歯擦音は緩やかに軽減されます。
リダクションを調整することで、歯擦音がうるさくないが不自然でもないレベルになるようにします。
Frequency(フリークエンシー)
フリークエンシーは「どの音域をディエッサーの対象とするか」を表します。
例えば、7Khzという周波数を設定すると、7Khzを中心とした音を中心にモニタリングして、音量が大きいと検知した場合には、7Khzを中心に音量を軽減します。
何度も書いている通り、ディエッサーで軽減したい歯擦音は超高音域に存在しているので、基本的には7Khzなどの超高音域を設定することになります。
Range(レンジ)
レンジは、「ディエッサーで軽減する音域の広さ」を表します。
言い換えると、フリークエンシーで設定した周波数を中心に、狭い音域の音量を下げたいか、広い音域の音量を下げたいかということです。
Logic Proのデフォルトのディエッサーでは「ワイド(広い)」と「スプリット(狭い)」を選択できます。ワイドの方が超高音域全般に対してディエッサーが効いてくるので、体感としては効きが良くなります。
ディエッサーの使い方
ディエッサーのおすすめ位置はコンプレッサーの後
ボーカルミックスに唯一の正解というのはありませんが、個人的にはコンプレッサーの後にディエッサーをかけるのがおすすめです。
なぜなら、コンプレッサーによって、そもそもの各音域のバランスが変わってしまうからです。
ディエッサーをどのくらいの強さでかけるかは、歯擦音がどのくらい悪目立ちしているか次第です。しかし、ディエッサーの後にコンプレッサーをかけると、各音域のバランスが変わることで、歯擦音の目立ち具合も再び変わってしまいます。これでは、せっかくディエッサーを適切な強さに調整をしても二度手間に成りかねません。
そのため、先にコンプレッサーをかけてから、ディエッサーという順番にしています。
ディエッサーのおすすめ設定
ディエッサーに限った話ではないですが、プリセットをベースに調整するとやりやすいです。僕(Logic Proを利用)の場合は、「Male Vocal – Wide Band」が丁度良い具合にディエッサーが掛かるので、これをベースにリダクションを調整しています。
もう少しディエッサーを強くかけたいなという場合は、リダクションをデフォルトの6.0dBから7.0dBや8.0dBへと上げていきます。ディエッサーが強すぎるなというときは、リダクションを4.0dBなどに下げていきます。
一応、参考として「Male Vocal – Wide Band」の各パラメーター値を以下に記載しておきます。
リダクションはどのくらいが適切か
耳を頼みに調整するしかないのですが、迷ったら、以下を参考にしてみてください。
リダクションの値のチェックポイント
- サ行が目立つ
まだディエッサーが弱いです。リダクションの値を大きくしてみてください。 - 歯がない人のような声になっている
この場合はディエッサーが強くかかりすぎています。もう少しリダクションの値を小さくしてみてください。
なお、ディエッサーを掛けると、超高音域を中心にボリュームが下がるので、少し音が曇ったようになったり、アタック感が失われたように感じると思います。しかし、これらはその後にイコライザーを使うことで取り戻せます。
ディエッサーは、音質全般というよりも、あくまでも歯擦音の目立ち具合に意識を集中するのがおすすめです。
まとめ
今回は、ディエッサーについて説明しました。
- ディエッサーとは
「サ行」を中心とした歯擦音を軽減するエフェクトプラグイン - ディエッサーの仕組み
超高音域における音量がスレッショルドを超えたら、超高音域の音量を下げる - ディエッサーの使い方
コンプ系(コンプレッサーやリミッターなど)を掛けたあとに使うのがおすすめ。音の質感はイコライザーで調整できるので、歯擦音の目立ち具合に意識を集中してかけよう。
以上です!
この記事を書いた人:RAq(@raq_reezy)
ラップをしてます。過去にKADOKAWAからミニアルバム2枚、その他、自主音源の配信などしています。基本的に全て宅録で製作しています。(自主でのリリース作品はこちら)
宅録暦は10年程度ですが、自分が宅録をはじめるときに、こんなサイトがあれば良かったなと思ったので、書いてみることにしました。