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記事の目次
はじめに
ボーカルのミックスをするにあたって、コンプレッサーについて詳しく知りたい方へ。
この記事では、以下の内容を説明しています。
この記事の内容
- そもそもコンプレッサーとは
- コンプレッサーは何のために使うの?
- コンプレッサーの仕組みとパラメーターは?
- コンプレッサーの具体的な使い方は?
コンプレッサーは、ボーカルのミックスにおいて必要不可欠で重要なプラグインです。この記事を読んでいただければ、その仕組みを理解して、コンプレッサーを使いこなせるはずです。
ぜひ最後まで読んでみてください。
コンプレッサーとは
コンプレッサーとは、音を圧縮することで、音量の大小の差(ダイナミックレンジ)を狭めるプラグインです。
ざっくりと説明すると「一定以上の音量のときに、その音量を下げる」という仕組みになっています。そのため、全体のボリュームを上げつつ、コンプレッサーを掛けることで、小さい音は大きく、大きい音は小さく抑えることができるのです。
ボーカルを録音していると、大きな声で歌っている部分と、小さな声で歌っている部分というのが必ずあります。そのため、コンプレッサーを掛けて上げることで、全体を均一にならすことができます。
ちなみに、大体のDAWソフトにはデジタルなコンプレッサーのプラグインが入っていますが、本来は上の写真のようなハードウェア機器です。
コンプレッサーの用途・目的
(1)音量のばらつきをなくして聴きやすくする
上でも書いた通り、ボーカルを録音していると、大きな声で歌っている部分と、小さな声で歌っている部分が必ずあります。
もしも、コンプレッサーが掛かっていなければ、リスナーからすると「大きな声で歌っている部分に音量をあわせると、小さな声で歌っている部分が聴こえない」、「小さな声で歌っている部分に音量をあわせると、大きな声で歌っている部分がうるさい」という状態になってしまいます。
また、ボーカルとトラック(インスト・カラオケ音源)の音量バランスをあわせるときにも、大きな声で歌っている部分にあわせると小さな声で歌っている部分が埋もれたり、小さな部分にあわせると大きな声で歌っている部分が浮いたりと弊害が出てきます。
そのため、例えばクラシック音楽のように「音量の大小すらも表現技術のひとつだ」という事情でもなければ、音量の大小であるダイナミックレンジはある程度揃えた方がよいのです。(ただし、やりすぎるとボーカル表現が平坦になってしまうため注意が必要です。)
(2)音圧をあげて迫力を出す
コンプレッサーのもうひとつの目的としては、音圧をあげるというものがあります。
言い換えると、音割れを防ぎつつ、なるべく音量(ボリューム)を大きくするということです。そのため、大きすぎる音を抑えつつ全体のボリュームをあげられるコンプレッサーは、曲の最終的な仕上げ調整であるマスタリングの際にも使用されます。
もともと、ジュークボックスやラジオで掛かった際などに音量が大きい方が迫力があって目立つことから、1960年代頃から少しでも曲全体の音量(音圧)をあげるということが目指されるようになりました。これを音圧戦争といいます。
過剰に音圧だけを求めることは曲の質を犠牲にすることにも繋がりますが、リスナーは他のアーティストの曲と混ぜて聴いたりするわけなので、一定の音圧は求めた方が良いでしょう。
コンプレッサーの仕組みとパラメーター
コンプレッサーは「一定の音量以上であれば、その音量を抑える」という仕組みになっています。
この仕組みを調整するための4つのパラメーターがあります。この4つのパラメーターを理解したなら、コンプレッサーをマスターしたも同然です!
それぞれを詳しく説明していきます。
Threshold(スレッショルド)
Threshold(スレッショルド)は、「どのくらいの音量になればコンプレッサーを作動させるのか」を表しています。日本語では「閾値」といいます。
例えば、スレッショルドを-20.0dBに設定していた場合、コンプレッサーは音量が-20.0dB以上であることを検知すると-20.0dBに近づけようとしてくれます。
Ratio(レシオ)
Ratio(レシオ)は、「コンプレッサーにどのくらい音量を圧縮させるか」という圧縮比率を表しています。
例えば、スレッショルドを-20.0dB、レシオを2:1に設定していて、-10.0dBの音量が鳴った場合を考えてみましょう。
まず、-10.0dBは-20.0dBよりも大きいので、コンプレッサーが作動して音量を-20.0dBに近づけようとします。このとき、圧縮比率が2:1(-10.0dBが1/2、-20.0dBが1/2)なので、最終的に音量は-15.0dBまで圧縮されます。
レシオは大きければ大きいほど、圧縮が強くなります。例えば、上の例であれば、もしもレシオが3:1(-10.0dBが1/3、-20.0dBが2/3)なら-16.6dBまで、レシオが4:1(-10.0dBが1/4、-20.0dBが3/4)なら-17.5dBまで圧縮されます。
Attack(アタック)
Attack(アタック)は、「コンプレッサーが作動してから圧縮が完了するまでのスピード」を表しています。
例えば、アタックが10ミリ秒であれば、10ミリ秒かけて圧縮されるということです。
さて、音には「音の最大部分(アタック部分)」と「余韻」がありますが、アタック部分が目立つことを「アタック感がある」といいます。
アタック感を残したい場合は、アタックの秒数を長めに設定します。そうすることで、アタック部分が圧縮されすぎてしまうことを防ぐわけです。逆に、アタック感を弱めたい場合には、アタックの秒数を短く設定して、アタック部分を積極的に圧縮していきます。
Release(リリース)
Release(リリース)は、「コンプレッサーが作動して圧縮が完了してから、解除されるまでのスピード」を表しています。
例えば、Release(リリース)が200ミリ秒であれば、コンプレッサーが作動したあと200ミリ秒かけて解除されるということです。
先ほど、音にはアタック部分と余韻部分があると書きましたが、余韻部分の音量がすでにスレッショルドを下回っていた場合でも、その前にコンプレッサーが作動していれば、リリースが完了するまで音は圧縮され続けます。つまり、リリースを長く設定すると、コンプレッサーは長く圧縮し続けることになります。
そのため、リリースを長く設定すると、圧縮感の強い音になります。逆に、リリースを短くするとナチュラルな音に近づきます。
Gain(ゲイン)
コンプレッサーの音量圧縮に関わるパラメーターは以上の4つですが、基本的に音量を圧縮していくと音は小さくなっていくばかりです。
そこで、コンプレッサーにはゲインがついています。大きな音を圧縮した分、ゲインで全体の音量をあげてやることで、全体を元々の音量レベルまで戻してあげます。
コンプレッサーの使い方
どのようなボーカル表現にしたいかを考える
まずは、どのようなボーカル表現にしたいかを考えてみましょう。
- 抑揚はほしい?ほしくない?
- アタック感はほしい?ほしくない?
- 迫力はほしい?ほしくない?
- 圧縮感はほしい?ほしくない?
今回のミックスで表現したい雰囲気をゴールとして想像することで、その音に近づけるようにパラメーター調整を試行錯誤できるようになります。
目指したいボーカル表現に沿ってコンプレッサーをかける
例1:アタック感の強い「キレのあるラップ」をしたい
メロディなどは付けずに、アタック感の強い「キレのあるラップ」をしたいとします。
その場合、まずアタック感を消してしまわないように、アタックは長めに設定します。
また、リリースを長くしてしまうと、一度コンプレッサーが作動したあとに、次のアタック部分で、まだコンプレッサーが作動したままでアタック部分を圧縮してしまう可能性があります。そのため、リリースは短めに設定する必要があります。
また、ラップの中で、自然と発せられる「シュッ」とか「サッ」みたいなサ行の歯擦音(しさつおん)や「息継ぎ」も聴かせて迫力を出したい場合、全体的にアカペラのボリュームを上げる必要があるので、音量の大きな部分が割れないよう、スレッショルドとレシオはコンプレッサーが強めにかかるように調整します。
例2:流れるような「メロディアスなラップ」をしたい
全体にあまり抑揚がない、流れるような「メロディアスなラップ」をしたいとします。
その場合、アタック感はある程度消えても良いので、アタックは短め、そしてリリースは長めに設定します。また、スレッショルドやレシオもコンプレッサーが強めにかかるように調整すると、ダイナミックレンジが狭まって、抑揚を抑えることができるでしょう。
いろいろ試してみよう
これらはあくまでも一例ですが、このように目指したい音に対して、どのようにパラメーターを調整すればいいかを考えて、実際にコンプレッサーをかけて確認してみるという作業をしていくことで、理想のボーカル表現に近づくことができます。
コンプレッサーとリミッター
コンプレッサーと似たようなツールとして「リミッター」があります。
リミッターとは、絶対に一定以上(スレッショルド以上)の音量にならないようにするプラグインです。
言い換えると、コンプレッサーのレシオを∞:1に、アタックを0ミリ秒に近づけていくと、コンプレッサーはどんどんリミッターに近づいていくといえるでしょう。
まとめ
今回は、コンプレッサーについて解説しました。
- コンプレッサーとは
一定以上の音量を圧縮するプラグイン。コンプレッサーで大きな音を抑えつつ、全体のボリュームをあげることで、音量の大小を均したり、音圧を稼ぐことができる。 - コンプレッサーのパラメーター
コンプレッサーは、「スレッショルド」、「レシオ」、「アタック」、「リリース」の4つのパラメーターを調節する。 - コンプレッサーの使い方
どのようなボーカル表現にしたいかをまずはイメージして、それに近づけるようにパラメーターを調整していこう。
以上になります!
この記事を書いた人:RAq(@raq_reezy)
ラップをしてます。過去にKADOKAWAからミニアルバム2枚、その他、自主音源の配信などしています。基本的に全て宅録で製作しています。(自主でのリリース作品はこちら)
宅録暦は10年程度ですが、自分が宅録をはじめるときに、こんなサイトがあれば良かったなと思ったので、書いてみることにしました。