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記事の目次
はじめに
ボーカルのミックスをするにあたって、リバーブとディレイ(エコー)について詳しく知りたい方へ。
この記事では、以下の内容を説明しています。
この記事の内容
- リバーブとディレイとは
- リバーブとディレイの仕組みや違いは?
- おすすめのプラグインは?
- おすすめの使い方や設定は?
リバーブやディレイは、ボーカルに高級感を出す上で非常に重要です。
この記事を読んでいただければ、リバーブやディレイの基本を理解できるので、ぜひ最後まで読んでみてください。
リバーブとディレイとは
リバーブとディレイ(エコーとも呼ぶ)は、どちらも「空間系」と呼ばれるエフェクター・プラグインです。リバーブが「残響音」であるのに対して、ディレイは「反響音」という違いがあります。
リバーブとは
リバーブは「残響音」のことです。
例えば、お風呂で歌うと声が響きますよね。これが残響音です。
ちなみに、お風呂やホールであれば、音の反射が続くので残響音は長く残りますよね。一方で、ふとんにくるまって声を発すると、ほとんどの音は反射することなくふとんに吸収されてしまい、ほぼ残響音はないでしょう。
このように残響音の強さや持続時間は、その音が発せられた環境によって変わってきます。
ディレイとは
ディレイは「反響音」のことです。
山で叫ぶと、「やっほー、(やっほー、やっほー、やっほー)」という感じで「山びこ」となって返ってきますが、あれがまさにディレイのイメージです。
声が響いているというよりは、声が返ってくるというイメージです。
リバーブとディレイの違い
リバーブはあくまでも残響音であるため「別の音」としては認識できません。一方で、ディレイは反響音であるため、元々のボーカルとは「別の音」として認識できます。
それぞれの効果の違いとしては、リバーブは、元々のボーカルに残響音を付与することで、他の音と馴染ませたり、高級感やきらめきを与えるような効果があります。それに対して、ディレイは「反響音」を追加することで根本的に音を太くすることができます。
言い換えると、リバーブは音の質感をつくっていくエフェクトであるのに対して、ディレイはそもそもの音の形状を作っていくエフェクトだともいえます。
リバーブの仕組みとパラメーター
リバーブの仕組み
そもそも部屋の残響音は、発せられた音が、部屋の中でさまざまな反射をすることで生じます。
一方、人工的に発明されたリバーブは、音によって何かを振動させることでエフェクトをかけるようになっています。例えば、物理的なリバーブ機材として開発されたものだと、プレートリバーブは鉄板を振動させることで、またスプリングリバーブはバネを振動させることで、残響音を得ていました。
僕たちが使うDAWソフトではリバーブはデジタル的に処理されますが、基本的には、上のいずれかの仕組みをデジタルで再現・シミュレーションしています。
リバーブの主要なパラメーター
(1)Decay Time(ディケイ・タイム)
ディケイタイムは「残響音が何秒間続くか」を表しています。
先ほど、お風呂だと残響音が長く続く、ふとんの中だと残響音はほとんどないと書きましたが、こうした違いを表現できます。「どれだけ音が反射して残り続けるか」を調整すると思えば良いでしょう。
少し長めに設定するとリバーブの掛かりが良くなりますが、ディケイタイムが長すぎると残響音同士が不協和音を生み出すため、いくらでも長くすれば良いというわけではありません。
(2)Size(サイズ)
サイズは「残響音が鳴っている部屋のサイズ」を表しています。
例えば、狭い部屋であれば、音はすぐに壁に到達して反射します。一方で、広いコンサートホールであれば、音が反射するまでには時間が掛かるでしょう。
サイズが広いと、広がりのある滑らかな質感になりやすいです。また、サイズが狭いと、メタリックな質感になりやすいです。
(3)Equalizer(イコライザー)
残響音に対してEQを掛けることができます。
残響音では元の音よりも高音を強調したいなど、残響音に対して、特別な音作りをしたい場合に利用します。
イコライザーについての詳細は、以下をご覧ください。
(4)Mix(ミックス)
ミックスは、「元のボーカルとリバーブの掛かったボーカルの割合」を表します。
元のボーカルのことを「ドライ」、リバーブの掛かったボーカルのことを「ウェット」といいます。ドライを80%、ウェットを20%といった感じで設定します。
ディレイの仕組みとパラメーター
ディレイの仕組み
ディレイの仕組みは、あまり難しくありません。元の音を一定のペースで再度鳴らしているだけです。
ディレイの主要なパラメーター
(1)Delay Time(ディレイタイム)
ディレイタイムとは、「元々の音からどれくらいの間をおいて音を反復させるか」を表します。例えば、ディレイタイムが1秒であれば、元々の音から1秒後に音が繰り返されます。
ディレイタイムは、基本的に曲のテンポと揃っているほうが気持ち良くなります。例えば、曲が2秒ごとにバスドラムが鳴っている曲なら、1秒や2秒や4秒など、バスドラムと揃ったテンポで反響音がなった方が気持ちが良いですよね。1.3秒とかで反響音がなると違和感があるでしょう。
そのため、プラグインによっては、ディレイタイムを秒数ではなく、はじめからBPMに対する比率で設定できるようになっています。こうしたプラグインを使う場合は、計算の元となるプロジェクトのBPMを正しく設定しておくのを忘れないようにしましょう。
(2)Feedback(フィードバック)
フィードバックは、「反響音がどのくらい返ってくるか」を表します。
例えば、フィードバックが50%であれば、一回反響するたびに音量が半分になっていきます。フィードバックが20%であれば、一回反響するたびに音量が5分の1になっていきます。
フィードバックの値が小さいほど、ディレイは速やかに聴こえなくなっていきます。例えば、フィードバックが10%であれば、1回目の反響音は元の音量の10分の1なので微かに聴こえるでしょうが、2回目は100分の1なので、ほぼ聴こえないでしょう。逆に、フィードバックの値が大きいと、ディレイはしつこく響き続けます。
(3)Mix(ミックス)
ミックスは、「元のボーカルとリバーブの掛かったボーカルの割合」を表します。
リバーブと同じですが、元のボーカルのことを「ドライ」、リバーブの掛かったボーカルのことを「ウェット」といいます。ドライを80%、ウェットを20%といった感じで設定します。
リバーブのおすすめプラグインと使い方・設定
リバーブのおすすめプラグイン
僕は、DAWソフトとしてはLogic Proを使っていますが、Logic Proのリバーブなら「ChromaVerb」がおすすめです。
ChromaVerbaはプリセットの数が大変豊富で、なんと86種類ものプリセットがあります。ここから曲にあうものを選んでパラメーターを多少調整するだけで良いので、かなり使いやすいです。
リバーブの使い方
(1)リバーブをセット
まずは、リバーブプラグインの「ChromaVerb」をセットしましょう。
(2)プリセットを選ぶ
続いて、曲にあうプリセットを選びます。個人的には「Concert Hall」や「Vocal Plate」あたりを多用しています。
(3)パラメーターを調整
プリセットを選んだら、パラメーターを調整していきます。
リバーブの音色や空気感については、適切なパラメーターを選んでいる時点でクリアしていると思いますが、ミックス(Dry / Wet)については、Dry:70% & Wet:30%がデフォルトになっていて、このままではリバーブが掛かりすぎなので、曲にあわせて調整します。
僕はDryを100%にしたうえで、Wetを2%程度から30%程度の間で調整することが多いです。
(4)ボーカルだけでなくインストも鳴らしながら調整しよう
プリセットの選択やパラメーターの調整は、ボーカルだけを聴きながら行うのではなく、インストも含めて鳴らして、全体のバランスを聴きながら行うようにしましょう。
これは他のプラグインについても言えることではありますが、リバーブは特に全体と馴染ませることが重要です。
リバーブのおすすめ設定
リバーブの設定には正解がありませんが、例えばこんな感じという参考を2つほど示します。
(1)リバーブを強めにかける
リバーブの設定例
- プリセット:Concert Hall
- Dry:90%
- Wet:18%
プリセットを「Concert Hall」にして、Wetを18%程度にしているパターンです。
オートチューンをかけて歌う系のものだったりすると、ややリバーブを強めに掛けています。その他、アドリブや被せなどの本線でないアカペラ(音量を小さく鳴らすもの)については、リバーブを強めにすることが多いです。
(2)リバーブを弱めにかける
リバーブの設定例
- プリセット:Vocal Plate
- Dry:100%
- Wet:3%
プリセットを「Vocal Plate」にして、Wetを3%前後に設定するパターンで、リバーブを掛けすぎないナチュラルな仕上がりにしたいときには、このような設定になることが多いです。
音程をつけないラップなどの場合は、リバーブが強すぎると違和感が出がちなので、弱めにかけることが多いです。
ディレイのおすすめプラグインと使い方・設定
ディレイのおすすめプラグイン
Logic Proのディレイは「Echo」というシンプルなプラグインがおすすめです。
「左右でディレイの鳴りを変えたい」など、ディレイについてのこだわりが強い場合は、このシンプルなプラグインだと機能不足なのですが、一般的なディレイであれば、これで十分です。
ディレイの使い方
(1)BPMが適切か確認
DAWでは、基本的にプロジェクトごとにBPMを設定します。
こちらのプロジェクトであればBPMは70に設定されていますが、このBPMが実際の曲のBPMと揃っていないと、「Echo」プラグインでかけるディレイが不自然になります。
曲のBPMを調べるには「BPM Counter」というプラグインを起動した状態で曲を再生します。そうするとBPM Counterに曲のBPMが表示されます。めちゃ便利。
ちなみにプロジェクトのBPMをいじると、アカペラの位置がずれたりするので、BPMを測って正しい値を設定しておくのは、そもそもミックスの一番最初にやると良いです。
(2)Echoのパラメーターを調整
BPMが正しいことが確認できたら、「Echo」というプラグインをセットして、パラメーターを調整していきます。
ディレイのおすすめ設定
「Note」(ディレイタイム)の設定については、音を太くするといった用途であれば1/8、がっつりと遅れて別の音として聞こえてきて欲しい場合は1/4や1/2に設定することが多いです。Wetは1%〜7%くらい、フィードバックは30%程度にすることが多いです。
(1)ボーカルを太くしたい場合
パラメーターの調整例
- Note:1/8
- Feedback:32%
- Wet:2%
(2)別の音として反復させて、曲の間を埋めたい場合
パラメーターの調整例
- Note:1/2 or 1/4
- Feedback:32%
- Wet:7%
まとめ
今回は、リバーブとディレイについて説明しました。
- リバーブとディレイとは
どちらも空間系のプラグイン。リバーブは「残響音」、ディレイは「反響音」 - リバーブの使い方
プリセットから良いものを選んで、掛かり具合(Dry/Wet)を調整する - ディレイの使い方
BPMをあわせた上で、Note、Feedback、掛かり具合(Dry/Wet)を調整する
以上です!
この記事を書いた人:RAq(@raq_reezy)
ラップをしてます。過去にKADOKAWAからミニアルバム2枚、その他、自主音源の配信などしています。基本的に全て宅録で製作しています。(自主でのリリース作品はこちら)
宅録暦は10年程度ですが、自分が宅録をはじめるときに、こんなサイトがあれば良かったなと思ったので、書いてみることにしました。